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「…で、これからどうするの？」

３人の様子がようやくまともな会話が出来そうな所まで落ち着いたのを見計らって、
ディアは組んだ腕の先、二の腕辺りを、ファンシーな指先でトントンと叩いた。



その声に、相変わらず睦まじげに密着したまま夫妻が振り返る。
それから全く同じタイミングで首を傾げてみせた。
そして夫妻の隣では、未だ己の世界に入り込んだままのクリスが一人、幸せそうにキラキラしていた。

やれやれ、とディアはこめかみを人差し指で押さえた。
……このメンツでは、どうやってもディアが“保護者役”になるしかないのだ。

「だからぁ〜。いつまでもこの場所でボケッとしててもしょうがないでしょう!!」
「……ああ、そうか。そうだね……どうしようか？」


ディアのツッコミでやっと話の方向性を理解したブルートは、
首をかしげたまま妻の方へ視線を向けると、
彼の妻はひとさし指を唇に当て、ん〜……と考え込む仕草をしてから、
ふわりと笑顔を浮かべて見せた。

「水辺をもう少しお散歩したいわ。……どうかしら？」

顎に指を添えて首を傾げながら笑顔。
そんな姿にディアは“イヤぁ〜んっ!!”と高音で奇声を発しながらハートを撒き散らした。

「そんな風にオネガイされちゃったらもう従うしかないじゃないのォ〜!!」

手のひらで両頬を押さえながらキャッキャと騒ぐディアを、
夫妻は微笑ましげに見つめている。

ディアのこの言動は癖のようなもので、
普段なら自分以外の男が妻に近付くことを異様なほど嫌がり阻止しようとするブルートも、
何だかんだで妻には害が無いのを知っているからか警戒が薄い。
妻の方も、ディアの言動を見慣れてしまったのか特に驚くことも無く“今日も元気ね”と見守るだけだ。


「それじゃ、皆で水辺をお散歩しましょっか！」
「ほんとう？ ありがとうディアさん」
「イイのよォ〜!! なんたって貴女からの頼みなんですものぉ!!……ってコトで、オイそこのナルシスト！」

ブルートの妻にひとしきりハートを飛ばしてから、ディアはくるりと振り返って男声を放った。
その声を背中に受けたクリスが、やっとキラキラ世界から現実へと戻ってきたのか、
派手な服を翻して妙なポーズをつけながら振り向いた。

「おや、何かな？ 僕美しさが何かトラブルでも起こしてしまったかな？」
「違うっつの。次の行き先が決まったからアンタもちゃんと着いてきなさいよって言いたいのよ!!」
「何だい、そんなにこの僕の美貌から離れたくないというのかい？ いやぁ、僕はなんと罪深いのだろう！」

キラキラエフェクトと共に頭を抱えてみせるクリスを、ディアはあえて無視した。

「……あ！ イヤだわアタシったらぁ！ ダイジなコトを忘れてたワ!!」

手のひらを合わせてパチンとひとつ音を立てると、
ディアはどこか慌てた様子で足元のトランクを持ち上げた……。





　
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ブルートを勝手に「おにいさん」呼ばわりすることにしたらしい少女は何やら、
にやにやとブルートを見上げている。

突如現れた金髪美女…と思しき人物を見て、座長がほう、と眉を上げた。

言いながら、ディアと呼ばれた女性？を興味ありげな様子で眺める。

金髪美女の頭部から生えた湾曲した角に何か禍々しいものを感じたけれど、杞憂と思うことにしたようだ。