「――――」

気配が離れていって、一体どれくらいが経っただろうか。
一体これは何度目の覚醒なのだろうか。

幾度か途切れたのは覚えている。
その度にこれが最後だと、これが最後だと思ってきた。
それは――はじめて、この世界で目が醒めた時に似ていた。

落ちては、戻る。
落ちては、戻る。

それを繰り返していくうちに、――緩やかに時間が伸びていく。

「‥‥‥、‥」

意識して息が吸えて、吐ける。
それだけで今置かれている状況を推し量るには十分だった。
理由はまだ判りかねる、が。

――ぼくらは、死に損ねたのだ。

薄目を開こうと試みる。
瞼は、重い。
今の処、開く気配はない。

随意になった息で、ため息をひとつ打つ。
音も、聞こえなかった。

代わりに――
近付く何かの、気配を感じた。

四肢に力を込める。
‥立ち上がることはできた。

何も見えない。何も聞こえない。
けれど、それ故にか、近付いてくる気配をありありと感じる。



――――これは――、敵だ。



それと、誰か、わからないけれど。
近くに知ってる気配も、誰か――。

いや、‥この気配は多分、知っている中でもぼくに近かった誰かだ。
漠然としているけれど、それでも出来得る限りをとがらせて、覚えのある何かを拾いあげる。

（り‥‥せな‥？）

　クロエは離れていくイースに向かい、ぶんぶんと手を振っていた。

人形が小さな手を振り、去りゆく姿を見送った

ゆら、と佇む。何処か、頼りなさを感じる足取りは、距離が詰まる度に、緩やかに力強いものに変わっていく。

敵意が途切れるのと、同じくして。――竜は何かを捜すように、首を巡らせる。動作に困惑を滲ませ乍ら、駆け去っていく――