「旨そうな食事であるな」

それは、確かにそう言った。
目の前で家屋を一呑みにした右手をこちらに向けて。
「食事って僕！？」
今まで培った経験か、それともただの勘か。
横に飛んで伸びてきた右腕を避ける……割とギリギリで。
「他に旨そうな食事は見当たらぬであろう？
　大人しく余の食事になるがよい」
ソレはそう答えると蛇が鎌首をもたげるように左手を持ち上げる。
空を泳ぐように飛来する左手は、さっき飛んだ勢いを殺せずに転がり続けた事で幸運にも避ける事ができたけれど。
「冗談じゃない！！よく解らないままに死ねないよ！」
心からの叫びを上げて、なんとか立ちあがろうともがく。
いつもと違ってポーズなんて気にしてられない。
「大体、余って何なのさ！？どこかの王様！？」
「当然であろう、余は全の世界を呑み滅ぼす終焉の王よ。
　……足掻くならば飽くるまではその興に付き合ってやろう」
いつの間にか戻していた右手から、大量の蛇が溢れ出て僕を呑もうと近づいてくる。
多少なりとも距離が開いた事が幸いした。
後は量で攻めてくることも……かな。
「何それ手品！？タネとか無いっぽいんだけど！！」
銃をポイントし、呼吸を整えて。
「頼むよ僕のエンブリオ！！」
トリガーを引けば、銃口から放たれるのは敵を押し流す大量の水。
これでもう少しだけ時間が稼げる……さて、どうしたものか。
「ふむ、存外に堪えそうだな。
　やはり一揆とやらに参加している個体は面白い」

「……気のせいかな、入れちゃいけないスイッチを入れちゃった気がするよ……」

正義はポケットからメモを出した。

親指と人差し指で輪をつくり、反対の手の人差し指をその輪に通す。

卍人の言葉に、少しデルタは考えて――

何かを言おうとして・・・だが皆まで言わずに口を閉ざした。


デルタが教える立場になるのは、何年先のことになるか・・・と考えを巡らせて。

一人いるの、何でかくっついてくる子が　と頬を掻く

といいつつ潤んだ瞳で見上げつつ両手を胸の前に置き見上げる

暫くの間彼女の甘い吐息が部屋の中にこだましていた

相変わらず、資本主義に対しての理解がやたらドライである。