―航海日誌二十三日目―

気付けばあと一週間ほどで、一揆に参加してから一週間が経とうとしている。
時間にしてみればほんの一ヶ月。
たったそれだけの間だが、随分と色々なことがあったような気がする。
一ヶ月がまるで半年にも感じられる、不思議な感覚だ。
まぁ、嫌いじゃないがね。
いつ終わるともしれないこの一揆で得た物は、存外かけがえのないものばかりだから。

さて、かけがえがあるのかどうかはともかくとして、いい加減先日契約したエンブリオについて記さねばなるまい。
ポセイドン？　あっちは別に今度でいいだろう。
まだ存在をしっかりと固定化できていない感覚があるしな。
なのでまぁ、今回はもう一体の方…………

そう言って、担いでいた銛を軽く振ってから逆手に持ち変える。
銛を撃ち出すための構え。鯨捕りが誇りとする、戦の構えだ。

（静かな小川に、「見てはいけないものを見てしまった」と言わんばかりの悲鳴が響く）