「忘れ物だ」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――― 嘲弄



　地下牢ともなれば時間を知る術はない。人口の灯りだけが周りを照らしていた。
　火を使っての料理は怖いから無しにして、臨時の同行者とはぐれない程度にコノエと探索する。
「どれも空っぽね」
「先遣隊が解放したのかもしれません」
　冷えきった空気が換気の行き届いていない独特の臭いを運ぶ。血の臭いも腐った肉の臭いもしない。少なくとも今いる場所は長く使われてないんだろう。
　私の城にある地下牢と見比べながら歩く。あくまで牢で檻とは違う構造。遠くから見えにくいという意味では、まだ格子の檻のほうが優れているかもしれない。見えないというのは看守に不利で虜囚に有利だから。
「水を入れたりするのなら便利かもしれないの。こういう形のも作りましょうか」
「そうですね。ここを塞げるようにもすれば更に良いかと」
　格子を軽く叩いてコノエが言う。垂れ幕じゃなく完璧に密封してしまう仕掛けを考えないといけない。水責めをするのなら排水口も必要で、そっちも塞がないと意味が無いし。
　つらつらと考えていると幾つか目の牢に何かが落ちているのを見つけた。鈍く固く光るもの。何をするまでもなくコノエがそれを浮かばせ私の目の前に運んできた。
「コイン？」
「基本通貨はパワーストーンですから、お守りか何かかもしれませんね」
　平べったい円形の金属。模様があった痕跡はあるものの、削れきっていて判別できない。水の魔術で洗浄した後、コノエからそっと掌へと手渡された。
　硬貨にしては作りが悪いし、量産に向かない厚さと重さをしてる。
「お土産にしましょ」
「模様の復元ができないか後で試しますか」
　こういう拾い物をコノエが止めることはない。はしたないと思うけれどそもそも育ちは良くないし。
　これの持ち主もこれを取りに戻ってくることはないだろう。私が拾わなくても誰かが拾っただろうし、持ち主との繋がり……痕跡のようなものは既に消えている。
「探せばもっとあるかもしれませんね」
「落とし物が多そうだものねえ、こういう所は」
　命とか。そう囁いて二人で笑った。

相手の居丈高な様子に少し緊張しているようだ。

調理判定 1D10 = 8 ( 8 )

　　　　　　　すらいむずずい。何処から出した？

知らぬが故の強気。そこに今までの経験による自信が混ざった、気負いの無い笑顔で答える。

2匹は挨拶？をすると、礼儀正しくお辞儀をして逃げて行った。

　などとナスルは茶々を入れる。
　

　時計の文字盤を描くように、十二の石が手際よく並べられていく――

12D12 = 94 ( 9 10 7 9 6 12 9 12 2 2 8 8 )
12D12 = 68 ( 1 8 8 4 1 5 9 10 4 8 1 9 )
12D12 = 72 ( 10 2 1 8 7 2 4 2 5 8 11 12 )
12D2 = 16 ( 2 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 2 )
　

　　　　　　男はそっと指輪に口づけた。

そこには書きなぐられた一枚の地図

裏ギルドと記されていた