機嫌がいいのか、少しは心を開いてくれたのか、天使のような見た目の青年は少年の質問ににこやかに答えはじめた。

青年は何か含むかのように微笑みを浮かべる

青年は楽しそうに再び言葉を紡ぎはじめた

遂に青年は、ははと乾いた笑い声を上げてどこか夢見心地にひとりごちた

杖でレムウチの尻をつつくエッダに捨て台詞を吐きつつ、内股で駆けていく空気の読めないオカマのB専の乱入でなにやらうやむやになってしまったが、ほんの少し天使の姿をした異形について知れた気がしたエッダ。異形が契約した少年の事を想像するとほんの少しだけ同情のようなものが湧いた。

…彼の血液から受けた記憶。両親には愛されず、縋ろうとした者にも裏切られ置き去りにされた少年。

その場にあったから使われるだけの都合の良い手ぬぐいのようなその生きざま。
一度使えば捨て置かれるだけの憐れな存在。本当は絹のように扱ってくれる者を求めつつも、求め方もわからず気まぐれな一度きりの優しさとぬくもりの為に自らを切り売りしていた少年。
かといって、自立して1人で生きる決意も出来ずいつまでもすがれる誰かを惨めに求めるばかりの弱い子供。
あの、まるで光のような少年の内に救う悲哀と絶望、その味のなんと甘美な事か。

今際の際に自らの終わりに安堵すら感じていたその様があまりに憐れで愛おしくて、ほんの束の間の戯れの夢を与えてしまったが、果たしてそれは少年にとって幸福な夢となるのか、それとも新たなる絶望を与える事になるのか…

そのまま青年は水の飛沫となりその場から姿を消してしまった。契約が解約された気配は無いから自分との契約も続行されてはいるだろう。