『冬は苦手だ』

最近、リマさんは疲れがとれないみたいで。
眠くて仕方ないみたいで、揺すっても覚醒が遅かったりして。

『砂漠の夜ってのは寒いんだよ。夜が続いてるみたいでな…朝型ってわけじゃないが、さすがに体内時計が狂う』

僕は砂漠を知らないし、エンブリオだから気候にあんまり影響を受けない。
…でも、環境が変わると落ち着かない、のは分かる。

なんで、僕のこと放り出さないんですか？

そう聞いてみたいけど、聞かない、聞けない。
お人好しのこの人は、特に理由はないけど成り行きでって言うんだと思う。
僕が独りでも戦えるなら、リマさんを巻き込むことはなかったんだ、って思う。
…でも、エンブリオ独りで戦えたとしても、きっと今よりずっと、寂しくて、虚しくて。
…寒かった、と思う。

『お前ももう少しましな契約主の方が良かっただろうに』

冗談めかしてたまに言う、その言葉が本心だってわかるくらいには一緒にいる。
エンブリオってそういうもの。
そこらへんの野良エンブリオですら大事にしてる人。
エンブリオとの多重契約は、元々メルンテーゼの人じゃないリマさんには、もしかしたら負担になるのかな…。
今まであんまり考えたことなかったけれど。


ねぇリマさん？
このお人好しさんの傍にいられる僕は、幸せなエンブリオなんですよ？