早朝のタンポポ荘、自室にて。目覚めて上体を起こすと何故か新参のエンブリオ「ポーン」と目が合った。

そして、開口一番にこれである。

そういう意味に聞こえるような言い回しをするんじゃない。

ただでさえ、契約時のアレでニスイから妙な影響を受けているかもしれないと疑っているのだ。


昨晩、とある鍛冶師に依頼しておいた新しい武器が届いた。

ルリアンナから受け取ったよくわからない材料に、よくわからない草を合成してもらった結果、
何故か卓袱台が完成するという時点でまったく意味がわからないが、
その卓袱台を素材にして武器を作ることができるという鍛冶師の言葉も意味がわからない。
それがこの「世界」のルールなのだろうと、大した期待もせず鍛冶師に依頼してみた結果が

この素晴らしい魔剣だ。

この小柄な曲刀は、今まで扱ってきたショートソードとは使用感はやや異なるものの、取り回しやすさは同等以上。
あえて通常よりも外向きに装着されたヒルトが複雑なラインを構成しているにも関わらず、異様なほど手に馴染む。
付加された反射魔法の副次効果をうまく利用し、細部まで完璧な重量バランスを実現しているようだ。
切れ味・耐久性ともに抜群。夜遅くに庭で適当な木の枝に斬りかかってみたところ、
相当に太い枝がいともたやすく、折れることなく切断された上に、刀身には無論傷一つ無かった。
武器としての性能だけではない。吸い込まれそうなほど深い闇に染まった刀身に、魔法陣をモチーフとした絢爛な意匠。
芸術作品として見ても、ここまでの品はそうそうお目にかかれないだろう。


ほとんど期待していなかった所からこんなものが出てくれば、大燥ぎするのも無理はなかろう。

ああ、あのサラマンダーが引くほどだったか・・・少し冷静になるのが遅すぎたな。

下駄をガコガコ鳴らしながら蛇口を振り回し走り回っている。