時折乱れる呼吸音、わずかにしかめる顔。
リーダー・グリゴリは、まだ目覚めないようだ。


デビルのエンブリオを残して姿を消したフライバイ、
前の戦いから戻らない樹里、クリス。

満足に動けるのは、8人。
カカとフョードルを数に入れても、元の人数より少ない。


・・・大丈夫なのかな、これ。


あいつは単独行動を控えろと言ってた。
残る全員を一度に相手取れる集団もいないだろうけど、
まとまって動くだけじゃ、すばやい行動はできない。

ねえ教えて、どうしたらいいの。



・・・どうせ、「お前にできることをしなさい」とか言うのだろうけど。
ため息をひとつ付いて、私は部屋を後にする。



そういえば、あいつには前の雪の日に助けてもらったんだった。
・・・はあ。お礼くらい言っとかないとな。


チョコ渡すついでにお礼を言うだけ。それだけだってば。

何か考えているというよりは、ぶつけ先を失ったような困った顔で。

嫌なことを思い出したというように顔をしかめる。

最後に二人でまともな会話を交わしてから数日後。
フライバイがいなくなり、グリゴリが昏睡し、樹里が抜け殻のようになった後。

以前のような賑やかさに欠けた食卓を終え、
各々部屋へ戻ろうとしたとき。

珍しく、カミユが茶を淹れている。
誘いに応じればそのまま食堂に居座るだろうし、
もしも場所を変えたければ盆に乗せて茶を運んで行くだろう。
いずれにせよ、カミユはぽつぽつと話し出す。

どうなるんだろう、という言葉はどこか他人事じみていて、
湯気のたつ茶をすするカミユの表情もどことなく疲れた様子で、ぼんやりしている。

金の鎧が振り向いた視線の先には、隅っこに追いやられたユニコーンの姿があった。

竜は身体を横たえて、近づける限りに視線を寄せる。
か細く、長く吐き出されたのはやはり、嘆息だった。

ごぶり、ごぼりと小さなエンブリオから泥が溢れ、見る間に大きな泥人形に変異する。