サラマンダーは先日契約したミニドラゴンに乗り、タンポポ荘の庭をご機嫌に飛び回っている。
その速度はサラマンダーよりずっと早い。

一方のミニドラゴンも、サラマンダーと一緒にいればある程度の自律行動が可能になるようで、
砂地に住んでいては経験できなかったような、素晴らしい景色と空気を楽しんでいるようだ。

あれに乗れれば、移動がかなり楽になりそうだが・・・

ミニドラゴンの体長はおおよそ１メートル。サラマンダーがちょうどいい大きさだった。

そこらじゅうを飛び回っていたミニドラゴンとサラマンダーが帰ってくる。
サラマンダーがミニドラゴンから降りると、ミニドラゴンはこころのなかに戻った。

言われた通り、念じてみる。エンブリオの力を借りて魔法を使う時のように。

一度しゃがみ込み、両足に力を込めて跳躍。



その跳躍は、身長の６倍ほどの高さにまで到達していた。

そして、こころのなかからミニドラゴンが飛び出してくる。

ミニドラゴンが翼を大きく広げてみせる。驚く俺を乗せ、滑空しはじめた。
グライダーのようにゆっくりと空を移動していると、肩に乗っていたサラマンダーから声が聞こえる。

今度は何を企んでいるのか。

片膝で立ち、左手をミニドラゴンの背につけながら、剣を持った右手をまっすぐ横へ伸ばす。

突然、ミニドラゴンが俺を乗せたまま急降下、地面から数メートルの位置で再び翼を広げ滑空。

強烈なスピードを得た状態で、タンポポ荘の庭の木の１つへ向かう。

その最中に、サラマンダーが剣に炎の魔力を宿す。

木の真横を通る瞬間、右手から伸ばした剣を左に振りぬく。
着地の瞬間にミニドラゴンとサラマンダーはこころのなかに戻る。

振りぬいた格好のまま5メートルほど両足で地面を滑り着地。砂煙の向こうを振り返ると
剣撃を受けた木は真っ二つになり、切り口が黒く焦げ、燃え始めていた。

どこからか飛び出してきた水が木を消火してゆく。
管理人いわく「対サラマンダーちゃん決戦用総合防火システム」だそうだ。

はしゃぎまわるサラマンダーをよそに、鎮火された木を眺めながら気を重くした。

社長に指示された場所へ向かうと、おぼろげで現実感のない鎧姿の何かが佇んでいた。

薄暗く不気味な通路が続いている。

居るとすればネズミくらいのものだろう。

声をかけられて、アムフェイが指示するよりも早くサラマンダーが動き出す。

通路の先めがけてファイアブラストが放たれる。

炎で照らされた通路の先に、動く石像やゴーレムが待ち構えているのが見えた。
あのまま進んでいたら、奇襲を受けていただろう。

サラマンダーに天井近くまで浮いて周囲を照らしてもらい、敵を見据え剣を抜く。
ゴーレム、ガーゴイル、それに兵士？がこちらにゆっくりと近づいてくるのがよく見える。

舌なめずりしながら巨大な柱を構え、素振りし始めた。