―航海日誌十九日目―

さて、最近サボりがちだったが、久しぶりの日記だ。
といっても、はて何を書いたものか……

とりあえず、新しいエンブリオと契約した。
水を司る神格、ポセイドン……ただし、アイコンが無いので紹介は恐らくしばらく先になる。
メタい？　なに、細かいことは気にするな。俺は気にしない。

そんなこんなで、現在はキーシュと共に水辺を散策中である。
……昨日はキーシュが日記を書きながらニヤついてたが、どうしたのだろうか。
なんだかこちらを見てニヤついていたような気もするが……
……ひとまず、それはともかくとしよう。

キーシュ、そう、キーシュである。
先日酔ったあいつを追いかけたこともあったが、本格的にあいつと二人になるのはこれが初めてだ。
前回は、現地で同行者を二名見つけられたからな。

改めてコイツといると、なんとなく弟分が出来たような気分になる。
元々俺たちは――妖精の嬢ちゃん方やケンドリックを含め――根無し草の集まりだが、その分自由すぎたり、積極性に欠ける部分がある。
しかしキーシュは、純粋な好奇心でドンドン先に進んでいく。
それが少し眩しく見えることが無いわけじゃない。
年を取った……なんてことは無いと思うんだがな。
いや、うん、俺はまだ若いし。

閑話休題。
キーシュは、言わば追い風だ。
パーティという船を導き、先を目指すための風。
本人に自覚があるのかはともかく……あいつが先へと進む意志を、俺は自然と裏切れないでいる。
これも、一つの才能なのだろう。
あいつが目指す先を、俺もつい目指したくなってしまうのだ。

願わくば、彼の往く旅路に幸多からんことを。
彼の旅路は、すなわち我らの旅路なのだから。

（本日の日記はここで終わっている）

妖精サイズのハート型チョコを差し出し

そう言って、担いでいた銛を軽く振ってから逆手に持ち変える。
銛を撃ち出すための構え。鯨捕りが誇りとする、戦の構えだ。