助け起こされた身体の傷は、思うよりも酷くはなかった。
目を醒ました時には既に、傷の幾ばくかは治癒が始まっていたようだ。

これほどにも無理を強いてなお、この身体は動く。
傷を癒やし、立ち上がり、また戦うだけのちからを保っている。
指先の感覚こそ、冬の水に浸したように遠くなってはいる、けれど。

じんと痺れたように鈍い指先。
差し伸べられた手が触れたことさえ、目で見るまでは確信できない。
そこにはただ、茫漠とした熱だけがあるように思えた。
果てを知らず燃えさかるもの。留めようとする手のひらより溢れ、軛を解かれて焼き尽くすもの。
私にはない、その熱と輝き。
焔の腕。

ともしびの名を与えられながらも、私は燻る熾火にしかなれない我が身を知っている。
まして、定命を磨り減らすようにして生きるばかりの今、消えかける命の灯を繋ぐのはエンブリオのちからだ。
こんな生き方を続けていれば、いかな鬼とて長くはない。
わかっている。知っているのだ。
今の私は、奪い奪われるのを恐れるあまり、ただただ己の持つ時間を食んで生きている。
きっともう、故郷の鬼たちほどの時は生きられない。
油を注がずに明かりを灯し続けているようなものだ。もとあった油が尽きれば、そこで終わり。

だが、じりじりと尽きていく命を、それでも省みるつもりになれない。
先を望むだけのちからは、既になくした。
生きながらにして、私はもはや過去の残像に成り果てつつある。
黄昏のあわいに、彷徨うばかりの幽鬼に。

燈子の角と敵の角を見比べている……

しきりに背後を振り返りつつ進む。