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身体が、頭がふわふわする。
自分がそこに、目の前に居る。
客観的に「それ」を見ている。


ああ、夢なのだ。
これは夢なのだと理解する。


夢の中だから、自分の幼い姿がそこにあるのだ、と。


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「…………」


つたない言葉で、何かを話している。


「あの、あのね。」


もじもじと、恥ずかしがるような様子で。
彼女――幼いころの自分は、彼女の目の前にいる誰かに話しかけている。


「わたくし…」


そっと、キラキラと輝く、花の形をした宝石を差し出す。
シューノワール家に受け継がれている、ネクターを模った宝石。


その花を小さな手のひらに乗せて差し出しながら、舌足らずな声で言う。


「おおきくなったら、およめさんになってさしあげますわ！」


だから、この花を受け取りなさい。
小さな身体で、自分よりも大きな相手に、一生懸命、手のひらを頭上に掲げて。

一瞬、相手は躊躇っていたように見える。
しかし、少女の(私の)手のひらから、そっと、その花を受け取った。

嬉しそうに、誇らしげに、少女は笑う。
少女の、小さなツインテールには、5つの輝く花の宝石が輝いていた。


”良いですか、ミルフィーユ。よくお聞きなさい。”

”この6つの花飾りは、我がシューノワール家において、大切な意味合いを持つ宝石です。”
”いずれ貴女は、この宝石を誰かにプレゼントすることになります。”
”自分の子にならば、その子への愛の証。そして祝福を祈る証。”
”同性であれば、生涯の友である証。どんなに離れていようとも、友である、と。”
”異性であれば、それは告白と同じ事。”

”…もし、たとえば複数人の異性に贈ったとしても…。一番最初に贈った相手以外は親友の証。”
”ネクターというのは、エンブリオと繋ぐ、いわばエンゲージリングのようなもの。”
”これは、それを模った宝石なのです。”
”貴女が、手渡す相手に、最大限の愛を表現するためのもの。”
”良いですか、これを渡す時はよくお考えなさい。相手が、この宝石の意味を、知らなくとも。”


おかあさま、おかあさまのおはなし、むずかしいですわ。


”いずれ、わかる時が来ます。その時に、後悔しない選択肢を選びなさい。”


おかあさま。


お母様。
お母様。


私は、あの後、
宝石の一つを、すぐさまプレゼントしたことに驚いていましたね。


お父様。
お父様もそのことに驚き、軽率なことを、とお怒りでしたね。



でも、私は間違っていなかったと、今でも思います。



私は………………



後悔なんて、していませんもの。


あの時、手渡せた。


その喜びが、今でも、かみ締められますもの。


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（淹れた紅茶を受け取ってくれて満足そうにしつつ）

（そう言い、自分の分のカップの紅茶を口に含みつつ）

勢いよく持参した土産をすすめてくる。香りの高い日本酒に焼いた餅。目の前で焼いてくれるようだ。醤油をつけて、あるいは焼いてからお湯をくぐらせきな粉をまぶす。強烈に食欲を誘うことだろう。