カヤナはキタキツネのエンブリオである。

彼女はもともとは北の地方に生息する一般的な普通の狐であったという。狐という動物は、魔法のような不思議な力との相性が良い。彼女もまた、長い時間を経て妖狐となり、人間に化ける術を得たのだ。ただ、妖狐になれたといっても、彼女はあまり妖狐には向いていなかったようだ。200年ほどの時を費やしても、せいぜいできることといったら人に化けることと、影をあやつることぐらいだ。狐によっては100年程度でも九尾になるようなエリート狐もいるらしいから、彼女は妖狐としてはだいぶ遅れているほうといえる。妖狐は力を増せば増すほど尻尾の数が増えるが、カヤナはいまだに尻尾1本の妖狐なのだ。

そもそも、彼女が人間のような精神を持てるようになったのも、つい最近のことらしい。そのせいか、彼女の様子を見ていると200年という歴史の重みは感じられず、未成熟な人間の子供のような思考回路のようだ。妖狐となってしばらくは狐の本能でただふらふらしていたとか。

ある世界では、妖狐を人間が使役し、飼いならすという文化があったが、この世界ではそのような人にはいまのところであったことがない。もしカヤナが妖狐を育てられる人に早い時期から出会えていれば、いまごろはとても力の強い妖狐として名を知られていたのかもしれない。

ただ、妖狐としての出世が遅いということに関して、彼女はあまり気にしていないようだった。妖狐の出世というのは、それこそ1000年や、3000年や、場合によっては万以上の桁でやっと成せるものなのだという。長い道のりはあせらずマイペースに、のんびりすすめるのが彼女の流儀らしい。

・・・あせっても、長生きはできないから、とはカヤナの談で、たまには年長者らしいことも言うのだな、と思うのだった。

魔法生物の事についてクレーが語れば、フィーグルも嬉しそうに答える。
魔法使いなだけあって、魔法生物には興味があったらしい。

ユニコーンの力かあなたの魔力かと問われれば、困った顔で

幼くない場合は取り替えっ子っていう表現が合っているか謎ですが、と首傾げ。
あんまり考えないでてきとー言っている顔。

わき目も振らず、アレコが持つアラレを食べています。