・第七のエンブリオ……ジャクリーヌ

　人間と云うのは基本的に傲慢な生き物だ。
　自分が食物連鎖の頂点であると信じて疑わず、己の利益の為には他者を躊躇い無く踏み台にする。
　しかし同時に謙遜する生き物である。
　同じ人間に混じると、途端に群れをなし始め、家族、仲間、友人、恋人、主従などの関係を結びたがり、自己の存在を組織に委ねる。

　このジャクリーヌもそんなありふれた人間の一人だったのだろう。
　彼女は地下牢で日々を怠惰にやる気無く生きる一女刑吏であった。
　我々侵入者を迎え撃つのも、王への忠義ではなく賃金の為の労働程度にしか考えていなかったのだろう。
　故に、容易く破れた。

　おれが彼女に契約を持ち掛けたのは、良く言って戯れ、最も悪い言い方で言えば穴埋め要員だった。
　彼女もそれは把握している。いつ切られてもいい覚悟はあるのだろう。そも、蛙如き生き物の元に己を属す人間など、おれは聞いたことがない。
　もしかしたら彼女は人間ではないのかもしれないが、おれはそんな事には興味はない。

洗濯物なんかが干してある兵舎の路地をするすると金髪の少女が歩いてきました

そういって軽く礼をします、どうやら先日の料理交換の話みたいです

少し笑みを浮かべながらいって

呟いて、抱えていたものを降ろす。

　　　　　　　　　　捨て去られたものたちのための流れにようこそ。