からだが、少しずつ、傷んでいくのを感じる。

ふと大きく息をした瞬間に痛む胸。
太陽のもとで眩む視界。
眠りに落ちるとき、地に惹かれるように重く軋む頭。

まともな食事を摂らなくなって久しい。
鬼の身体にも、どうやらいつか限界は来る。
今は私と共にあるエンブリオたちが、その境界を薄め、また遠ざけているらしかった。
ウィスプが物憂く、何かを訴えるように視界に顕現することが増えている。

暑く乾いた砂の大地を進み続ける、自分を何が突き動かしているのかもわからない。
時に気候に耐えかねて道を外れながらも、こんな場所を、選んで。

ただこの場所は、故郷から意識を逸らしておくには都合がよかった。
豊かな川が無数に広がるあの故郷。
水を見れば、どうしたってちらりと脳裏をかすめる光景がある。
けれど灼けつくような陽射しの下ならば、水を思うとき、それはもっと切実な希求にしかなりえない。
手のひらにひとすくい、ただそればかりを望むだけで済む。

ならば、身体が少しくらい損なわれるくらいのこと。

罪。故郷。かあさん。ウィスプ。川の流れ。父。彷徨い歩いた森。玄雲。この、砂の大地。
視界を様々によぎっては消える現実と幻。
眼の奥が、痛い。

(付加よろしくお願いします)

落ち込む。