鉄の臭いを嗅いだ気がした。




目を覚ますと数式の書かれたホワイトボードが視界に入る。

学友たちはもう次の講義に向かったらしく、モノクロの講義室には静寂が満ちていた。

いや、そうではない！　視界の右端に白く輝く物体を認め、そちらに振り向くと

隣の机に鮮血が散乱し、床に血溜まりができている／白い球体が脈打つように明滅を繰り返している


俺は　そいつに　手を伸ばして


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フリップドライブ、仰々しい名前を付けるとすれば携帯型-空間敷設式-加速/慣性制御装置。
（ヴェルさんの樹上の小屋にどうやって行こうかと考えた時に思いついた）

これを空中に足場として"置き"、連続して"蹴りだす"ことで
立体的な移動・加速・及び迅速な進行方向の変更が可能になる。
浮遊のための電力供給にはサンダーバード及びウィスプ。
空間制御にはオコジョ。思考伝達にシェイドを使用。

機能テスト-1
内容：装置２枚を水平に配置。その上を走行する。
結果：加速に成功。体感では時速40km程度。
メモ：速度計が無いのが悔やまれる。

機能テスト-2
内容：直線上に装置３枚を水平に配置。１枚は垂直に配置し減速用とする。
結果：加速及び減速に成功。体感では時速80km程度。

機能テスト-3
内容：直線上に配置した状態で、加速をせずに歩行を行う。
結果：歩行に成功。意思伝達は成功している。

機能テスト-4
内容：直線上に配置した状態から階段状へ配置パターンを変更し歩行を行う。
結果：思考伝達による配置変更成功。空中での上下移動は問題なく可能である。

機能テスト-5
内容：水平・円形に配置変更しその上の歩行を行う。
結果：特に問題なく歩行が可能であった。

機能テスト-6
内容：配置パターンは水平・円形を使用。
　　　 体を円形の内側に徐々に倒しながら踏み出すペースを上げる。
　　　 同時に装置自体も徐々に傾斜させ、配置の半径を広げる。
結果：50度ほど体を倒した時点で脚を踏み外し転倒した。

メモ：もし装置が機能不全を起こした場合に備える必要がある。
　　　 ミニドラゴンの力、火炎放射の反動は利用できそうだ。
　　　 なお外傷はホーリーライトにより治療した。

次の予定のため本日は実験を終える。

そう言って見覚えのある板を取り出す。

蛙は苔の生えた金属質な自分の皮を差し出している。
その表面には乾ききっていない粘液が生々しくこべりついている……。

何故か蛙は妙な心配をしているようだ……。

15cm四方ほどの板状の物体……フリップドライブと呼ばれたものを何枚か取り出し、
放り投げると地面に落下せずに、空中を漂い始める。