「――ルトー」
「…………」
「おーい、聞いてるかー？」
「ん……ああ……フラムか……」

呼びかけられた方を見ると、火の玉がふよふよと浮いていた。
ミニドラゴンのヴィートに捕獲され、もっしゃもっしゃと咥えられていたが、いつもの事なのでスルーしておく。

「なーに気の抜けた返事してんだ。何か変なモンでも拾い食いしたのかー？」
「んなわけあるか……。ここ最近、同じ夢を見続けていてな……。
　それがこう……なんか引っかかるというか、なんというか……」
「ふーん……。みょーに、細かい事気にしてんのなー」

お前が気にしなさすぎなんじゃあないか？
……って、こいつはそんな性格だったか。

「それってあれだろー。燃えるヤツがどうのこうのってやつだろ？」
「……ちょっと待て。なんでお前がそれを知っている。フラム？」

夢の内容は、まだ話してはいない。
何故、コイツはそれを『知っている』？

「俺様とお前とは、一部が繋がってるっぽいからなー。
　たぶん、そのあたりも共有しちゃってるんじゃねえの？」

勝手に俺の魔力を使えるからな……。
セラやヴィート達は出来ないようだし、コイツだけの特権…なのか？

「しっかし、本当に不思議だよなー。
もしかして、俺様達ってかなり特殊な関係だったりして」
「いや、俺達は主とエンブリオってだけだろう……」

共に戦う仲間でもあるが、と付け加える。
その言葉に、フラムは満足そうに揺らめいた。

「そういえば、俺様ってなんで契約したんだっけ？」
「……はあ？　そりゃあ、対決して俺が勝って……って、あれ……？」

その辺りの記憶が、すっぽりと抜け落ちている。
まるで、初めから記憶が存在しないかのような感覚。
思い出そうとすると、頭に鈍い痛みが走る。
『自身の中の何かが、それ拒むかのようだ』。

「ぐ……ぅ……ッ」
「お、おい、大丈夫か……！？」
「ああ……。けど、何なんだ、これは……」

違和感を拭えないまま、一旦思考を停止する。
『それの正体に気付いてしまえば、今の日常が壊れてしまう気がした』

それだけ言って、砂の詰められた袋を手渡してきた。