「前回までのあらすじ。僕らが下水道に潜んでいた三体の獣を倒す中、別のエリアでは緑の変態の親が用意した切り札が獣を倒してて、そこで緑の変態が『せっかくだからこのままこいつらに任せようぜ』っていう提案を――」
「ちょっと待てちょっとまて！その緑の変態は今すぐに訂正しろ！」
「まぁ、とにかく僕らは残りの獣を任せて駅前のフミヤに向かった訳。あぁ、フミヤっていうのは洋菓子チェーンだよ？言ってしまえばまんま不○家だよねっ。そしてこのまさかの展開もたぶん中の人の陰謀的なものがあるのかもしれない」
「あれだろ？全部俺らで倒す展開だとネタ考えるの面倒になるからもう簡単な形にしてしまおうという狙いだろ？」
「あっさり言ってしまうとそうだねぇ…。まぁとにかく、次いってみよう！」


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俺達は現在駅前のフミヤに来ていて、三階の席でまったりとスイーツを口にしている訳だ。
今日は期間限定のスイーツ勢ぞろいのフェアがあり、通常メニューも安く提供されている為、この日は結構人も来ている。
一階から二階はほぼ満席で、俺達は三階の席で食べている。ルーディは店で食べるならやっぱり三階が一番だなとよく言っており、どのみち三階で食べることは考えていたんだろうけど。

「いやぁ〜抹茶クリームケーキが実にうめぇわぁ。そしてこの紅芋モンブランもたまんねぇよぉ」
「なぁ…本当によかったのか？任せっきりで」
「いいんだいいんだぁ、たまにはこれくらい羽目はずさせてもらってもいいだろぉ？それに明日も控えてんだしよっ。ほれっ、お前らも食べろ食べろぉ〜♪」

俺はルーディがすすめてきた紅芋モンブランをいただくことに…。確かにこれは…美味しい。
コールはやはり青いケーキ中心。中には新作のソーダ味のケーキがあるようだが…、ソーダ味のケーキってどんなんだ？
ちなみに俺はチョコレート系が中心である。ビターチョコレートの効いた大人のザッハトルテは、俺的には結構一押しである。

「んっ…？」
「どうした、コール」
「いやぁそれがねっ、ほらっ…、あの十字の歩道にいるあの三人……」

窓から見える十字の横断歩道…、そこの中心にいる三人の少女。
先ほどスイーツを食べつつルーディからちょろっと写真を見せてもらった訳だが、その三人とおそろしく合致している。
ご丁寧に普段着らしき服は着用しているようだが…、たぶんあれは俺らを探してるんじゃないか？
俺らがこうしてケーキ食ってるのを既に相手は把握しているのだろう。
というか、ルーディを作った親が用意した三人だ。たぶん、こちらの状況を把握する程度の要素を持っていてもおかしくはない。

「あっ…、こっち向いたね」
「指差してなんか叫びながらぴょんぴょん跳ねてるなぁ、あの赤いの」
「こっちに走ってくるよ」
「どうするんだ、ルーディ。絶対最初から俺らがこうしてここでケーキ食べてるのバレてるぞ？」
「なぁに、気にすんな。せっかくだし、甘いもんでも食いながら話でもすりゃどうとでもなるって」
「お前はホント気楽だなぁ……」

三人の少女が店内に入ると、そのまま三階へとやってくる。
きょろきょろとあたりを見渡し、こちらの存在を確認すれば、赤いほうはずんずんと足を踏んでこちらへと接近する。
あぁ…こりゃ怒ってるよな…、どうみてもぷんぷん丸だ。

「おいお前ら…、人がせっかく協力しに出向いたってのに俺らに任せっきりとはどういうつもりだよぉ、あぁ！？」
「いやぁ悪いなぁ、まさか俺らが休憩している間にぱぱーっと片付けてくれるとはなぁ」
「何が休憩だよ！？お前ら俺らが別のエリアの獣を潰してるの気づいてわざとサボってたろ！？」
「まぁそうかっかすんなよ。たちっぱなしもあれだし、そこのテーブル席空いてんだから座れよっ」
「人に任せっきりの上に何だその態度は！？つーか俺らはお前らに用があるだけでここに用がある訳じゃねぇよ！」
「そういうお前の連れはどうなんだ？」

ルーディが赤いほうの後ろにいる青いほうを指差す。彼女のその手には、たくさんのスイーツの乗ったトレーを持っていた。
どうやら話している間に色々買ってきた模様…、食べる気満々である。

「ドライ……」
「せっかくきたのに何も買わずという訳にはいかないでしょう？それに…、今日は安いからたくさん買っちゃった」
「お前なぁ…、俺らの目的はあくまでこいつらにだなぁ――」
「あっ、そのモンブラン美味しそう。私も一つ頂いていいですか？」
「アインとツヴァイの好きそうなものも買ってきたし、三人で食べましょう」
「お前らなぁ！」

二人の様子に赤いほうは思わず地団駄を踏んだ。
何だか漫才みたいなことになってきた、目の前の三人の光景。
似たものを感じる…、違うけど何か俺らと似たものを感じる。

「苦労してるなぁ…、あんたも」
「お前に言われたくねぇよこのリア充！」
「そんなカッカしてるといい男もよってこねぇぞぉ？」
「痴女にだけは言われたくねぇよ！何だよあのデフォルトの格好」
「あぁ？あれが俺の動きやすい格好なんだよぉ」

あー…、ルーディまでスイッチが入ったぞこれ。
こうしてみるとこの二人は何処か似ているというか何というか。
その一方、赤いほうのことはお構いなしに黄色いほうは青いほうと楽しくスイーツを満喫してるようだけれども。

「まぁいい。ところでお前ら…、SisterSの三人だろう？」
「おぅ…、お前もちゃんと知ってはいるようだな」
「SisterS？」
「あいつが開発した、アバターとはまた異なる特殊生命体だ。こいつらの身体は全身が生態ナノマシンで構成されてるんだ。俺の実家にちょうど三体のカプセルがあってな…、カプセルには3Dプリンターみてぇな特殊技術を持ってんだ。その中にこいつらのもととなる液状の生態ナノマシンを流し込んで、後はデータを送信して起動すりゃあデータをもとに生態ナノマシンは肉体を徐々に構成して形になる。そうして出来上がったものがこいつらなんだよ。今はこうして人型を維持してるが、その気になればスライムみてぇな状態にもなれる。ただこの状態でのスペックは、アバターとほぼ互角といってもいいシロモノだよ」

なるほどな…、しかしこうしてみると本当に普通の人間と変わらない。
そりゃあルーディの生みの親が生み出したものなんだ…、その完成度が高いのも当然である。
しかし三人とも身体の特徴が見事に異なる…、まさに姉妹といったところか。
…あの赤いのはルーディと特徴が似てるな。胸の大きさはルーディのほうが少し上だけど。

「お前…、今のそのお前の考えたことが俺と同じようにこいつらに聞こえてたらどうすんだよ。特に赤いのが気にすんぞ、胸の大きさのとことか」
「おい、ロンゲてめぇ！」
「ちょっ――」
「まぁあれだよ、どう見てもぉ？俺のほうがお前よかサイズはあるからぁ？そう考えるのも仕方ねぇんじゃねぇかぁ？」
「この露出狂の腐れ○ッチがっ！」
「誰が露出狂だ、それに今は普通にここでの一般服は着用してんぞ！」
「あかいきつねとみどりのたぬきー」
「このドーナツ…、すごいもちもち食感。ミ○ドのあれとすごく似てるわ…」
「あらぁ、このモンブラン結構いいじゃないですか。お土産に買っていきます？」
「お前らっ！」

あぁ…、とりあえずもう詳しいことはまた後でルーディに聞くとしよう。
俺はささっと、その場を後にする。コールもそれに並んで一緒にこの場を脱出。
あれだな…、やっぱ似てるもの同士の会話はまだこの先も続くだろう。ここはあいつに任せる。

「ねぇねぇ正義、帰りにコンビニでカップのうどんとそば買おうよ。大盛り買って半分こ」
「お前…、あれ見て赤いきつねと緑のたぬきが食いたくなったとか言うんだろ？」
「そうとも言う」


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先に家に帰ってきた俺とコール。買ってきたカップめんで小腹を満たしては、家でゆっくりとくつろいでいる。
あいつはまだフミヤで長々と話しているんだろうか…、あの赤いのとはいつまで話が続くのやら。
コールは俺の膝の上に頭を乗せ、ごろんと寝ている。こうして膝枕をするのも随分と久しぶりなものだ。

「…犯してもいいよ？」
「しないよ」
「ちぇ〜っ…、ちょっと期待してたのに」
「するなよそんな期待」
「…ねぇ、正義。今の力だけで…、正義は、満足？」
「どうしたんだよ、急にそんなこと聞いて。お前が来てから、こっちだって助かってるのに」
「そう言ってくれるのは嬉しいよ？でも…、それでもあえて僕は聞くよ。正義が今の力だけで満足なのか」

一体なぜ、急にコールはそんなことを聞き出すのか。
コールはどうしようとしているのか…、そしてどうしてほしいのか…。
俺はこれまでの自分を改めて振り返り、今の自分ならどのような答えを出すか、ゆっくりと口を開く。

「……出来ることなら、さらに上を目指したい。ルーディや、メルンテーゼの仲間も一緒だからこそ、俺達はこれまでやってこれた。でも俺自身…、もっと強くならなきゃって思うんだ。大切なものを護れるくらいの強さが、俺はもっと欲しい」
「それが例え、人を捨てることになったとしても…？」
「えっ……？」
「正義……、僕は君によって生み出された唯一のエンブリオだ…、本来エンブリオの存在しないこの世界で唯一の…。でもまだ、真の契約を君とは結んでいない状態だ。もし僕と真の契約を結べば、正義はこれまでよりもその力を駆使することが出来る。君の魂は僕という光と結びつき、君の身体もこれまで以上の再生力を得ることが出来る。だけどそれすなわち…君は本来人のあるべきものを捨てることになる。力にしても、いずれコントロールが効かなくなる可能性もある」
「…どうして今まで、それを黙っていたんだ？」
「人を捨てるっていうのはね…、単純なことじゃないからさ。安易にそれを選べば、それで後々後悔するかもしれない。だから…、この事実はあえて伏せていたんだよ。正義が…、純粋に人であり続けられるように。だけどもし君がその覚悟を決めたのなら……、いつでも僕に言ってね……」

その言葉を最後に、コールはすやすやと眠りにつく。
人を捨てる……、か。今の俺に、それだけの覚悟があるだろうか……。

アクスをぶんぶん振り回しつつ

きょろきょろと周りを見渡す