今回の練習試合は趣向を変えて、雪合戦という形で申し込んでみた。
黒妖は半ば冬眠しかけていたが、無理矢理叩き起こした。
ともあれ、いつも通りの戦い方とは違い、新たな戦略を得るヒントになるかもしれない。
…と思っていたが、いざ始めてみると夢中になってしまってそれどころじゃなかった。
そういう意味では得たものは少なかったが、久々に童心にかえって、何かを取り戻したような気分にもなった。
案外悪くないものだな。
寒いところで動き回ったあとの風呂もまた格別だった。


次の進行地は山岳だ。
敵も強くなることだし、油断はせずにいこう。

…それにしても。
一揆が始まってしばらく経つが、未だに王の下へ辿り着いた者の話は聞かない。
とはいえ、あちら側は防戦一方。このままでは、いずれ王の喉元に喰らいつく者が現れるのは時間の問題。
にも関わらず、向こうから何か仕掛けてく様子がないのがかえって不気味だ。
絶対に城を落とされない確固たる自信があるのか？
それとも城を落とされても問題ないという理由があるのか？
このまま城を落とせば丸くおさまりそうだが、どうにも一抹の不安は拭えない。

深く考えてもどうにもならないものはどうにもならない。
この不安は心の隅に置いておき、いざとなったら逃げ出す心算でいるのが良いか。

杞憂だと良いのだがな。

>>巴

見覚えのあまりない服装の人物に気づき視線を向ける。
敵意は感じない事から威嚇などはしないが、しかし……何用だろうか？
小首を傾げていれば名乗られてしまい慌てる青年である。

あまり見慣れない恰好をした女性に声をかけられ、振り返る。

あなたがピィカと話を終えて一人になった直後、

おっかなびっくりといった口調で話しかけてくる声があった。
あなたが振り返ると、気弱そうな青年が会釈をしながら近づいてくる。