side:——オハン


「どういうこった？詳しく説明してくれるか？」

嬢ちゃんが言うにはアーネの上司とやらから連絡を貰うまで日数のロストに気づかなかった事。
嬢ちゃん達は空白になったことすら認知していなく、それが世界規模なのか、此処に影響があるものなのかを確かめたかった。
一時的に強い魔力反応があり、それはアーネが奪われた魔法道具が発動したと思われる。
それを扱っているのは奪った者なのか、行方をくらませた魔女の仕業なのか判断が付かない。

こんなところだった。

『でもオハン達が十三日目だって言うなら影響が出てるのは私達だけ、なのかな……』

「さてな。そいつが嬢ちゃん達を狙っているのか、指定した条件に嬢ちゃん達が含まれていたっていう可能性もあるが判断材料が少なすぎるな」

不確定要素ばかりで憶測の領域を出ない。
アーネの上司が間違っている、もしくは何かの画策のため付いたブラフか。

「こっちは十三日目だと記憶してる。強い魔力反応……に関しては場所が場所だからな、何度かは感知はしたがその魔法道具のものかまでは判断できねぇな」

そう答えると嬢ちゃんはそっか……と言うと黙った。
その時服の裾を誰かが引っ張っぱられる。
見ればアセナとセナがが立っていた。
セナはまだ少しバツが悪そうに顔を俯かせているが、アセナのほうはご立腹状態から通常モードに戻っているようだ。

「なんだ、今大事な話をしてるんだが」

「大事な話？」

アセナが首を傾げる。事態は身内での不可解な現象だ。二人にも説明しておくべきだろう。
嬢ちゃんに説明をする旨を伝え、俺は二人に簡単に嬢ちゃんからの話を話した。

「十三日目で間違いないデス」

セナも自身の記憶を探り、やがてはっきりと言い切った。

だが、

「……十二日目、じゃないの？」

アセナが不思議そうに口を開いた。
その場に嫌な空気が流れる。

「アセナ、お前今日で十二日目だって思うのか？」

「勘違いとかではなくてデスか？」

俺とセナの問いかけにアセナはしばらくうーん、と悩み、頷いた。

「うん。十二日目」

迷いのない言葉に頭痛を覚える。
この時間ロストの案件、嬢ちゃんたちだけなら話はもっと簡単だ。
彼女達だけが何かの影響を受けた、という事実。それは意図して嬢ちゃん達を狙ったという事だ。
それが同行していない、ましてやそのうち二人は今日を十三日だと言っているのにその中に一人だけ影響を受けている者がいる。
アセナの様子でこいつが嘘を言っているのは判る。そもそも嘘をつく意味がない。
なら、どうしてアセナだけが影響を受けた？どうして俺達は影響を受けていない？
特別な条件でもあると考えるべきなのか。

考えても答えはでない。問題はより複雑化したと言っても良い。

嬢ちゃんに伝えると彼女も驚きと戸惑いを隠せないようだった。

「どうする、一回合流するか？」

これはもう緊急事態だと言っても良い。魔女を放置しておくのも得策だとは思えないが、この現象を放置しておく事のほうが取り返しの付かない事態を招きかねない。
合流して対策を練ったほうが良いだろう。

『そうだね。そっちは今どこにいるの？』

嬢ちゃんも概ね同じ事を考えているようだ。
地図を取り出し互いの現在地を照らし合わせる。
すぐに合流、というわけにはいかなさそうだが、それでも数日内に合流できる範囲だ。

合流地点を決め、互いの無事を祈って通信を切る。

「よし、二人とも。嬢ちゃんたちと合流するぞ」

「何だかきな臭くなってきたデスね」

深刻な状況に自然、顔が険しくなる俺とセナだったが、

「このーに会える」

耳をぴくぴくと動かしながら嬉しそうなアセナに思わず溜め息が漏れた。
とりあえずこっちで出来る事、収集できる情報はまとめておいたほうが良いだろう。

「アセナ、浮かれるのも良いがお前にも変調が起きてるんだぞ？」

戒めと心配を交えて声を掛けるが本人は首を傾げている。いや、なんで首を傾げる……。

「特に困ってないよ？」

「困る困らないの話じゃないデスよ……」

セナも呆れた様子でこめかみに手を当てている。

「とりあえずだ。移動しながらでも良いからお前の空白の日を照らし合わせるぞ」

「ん……わかった」

そこから何か手がかりが見つかればいいんだがな。

　　　言うと、拳についた血を拭い、舌打ちする。