拝啓、お師匠様。

私にとって、お師匠様は師匠であり、先生ではないのだと思います。
なぜそう思ったのかと言えば、この世界で、先生みたいな雰囲気を持った人と出会ったからです。

その人の言葉には、自然と気付かされるものがありました。
私に悟らせようというのでなく、押し付けようとしているのではなく、うまく言えないですが、風のような。

風にも本当に様々な姿がありますから、風のような、という表現は当てはまらないかもしれませんが。

雲をつかむような話です。
風をつかむような話です。

この地で契約したエンブリオも5体となりました。
そして、6体目と契約しようとしています。
エンブリオの制御には、お師匠様から教わった「名付け」がとても役立っています。

エンブリオを駆使しなければ倒せない敵。
倒さなくてはいけない敵。

敵ではあるのでしょう。
目的を阻むという存在において。

この地で、神に祈る機会がありました。
きれいで、隅々にまで気持ちが行き届いている礼拝堂でした。
あの礼拝堂を管理しているであろうシスターの、気持ちがあの雰囲気をそうさせていたのだと思います。

その一方で、私は司祭と戦いました。
礼拝堂にいたシスターとは何の関係もないのですが、祈りを捧げる一方で司祭と戦うというのは、何らかの皮肉のようなものを感じずにはいられないのです。

あるいは皮肉でなく、血肉なのかもしれません。
神に祈り、神の言葉を受ける存在と戦うことで、神の血肉を感じるのだとすれば―――

　ごほんごほんと、なぜか顔を背けながら告げて。

　掌を差し出した。蒼白い焔が、不意に燃え上がる。微風に揺らめき、空気を冷たく焦がして。
　これは儂ら固有の妖術 "狐火" じゃが、似たようなもんじゃろ。と、からから笑って闇に放り投げた。

　神使の狐のように、気高い生き方もしておらぬしのう、……と韜晦のように続け。

　目を丸くして尋ねる。

　目の前の狐は人を食べたこともあるのじゃがなー、と、これは想うだけで口には出さなかった。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。

「―――。」

「―――。」