セバスチャンのながーいおせっきょうはつづき、ようやくおわったころにはげっそりとしたかおの猫。
こころなしか、くちからなにかたましいのようなものがぬけかけているようにみえます。

そんな猫のようすであきれがおでながめるししょー。


「まァ、自業自得だわな。」


やれやれといったようすのししょーに、猫はちょっぴりうらみがましいしせんをなげかけます。
でも――


「だがよォ・・・・・おめぇの心意気は、その・・・・・嬉しかったぜ？・・・・・・あんがとよ。」


すこしてれたようすのししょー。
猫はめをまるくしてししょーをじっとみつめたあと、とつぜんだきつきました。


「ぅわっ、オイコラ何しやがる！？」


『ししょー！！』


「クソがッ、調子のってんじゃねェ！！離しやがれこのクソガキィ！！」








ししょーのくちばしがみごと猫のひたいにめいちゅう！
ひたいをおさえてじめんをごろごろところげまわる猫。
そして、すっかりげんきになったししょー。

またいつもどおりのさわがしいいちにちがはじまる。
そのときはだれもがそうおもっていました――














「んで、結局のところどうなんだ、アイツはよ？」


ししょーはセバスチャンにたずねます。
セバスチャンはすこしあいだをおいてから、ゆっくりとはなしはじめました。


「そう・・・・・ですね。まだ様子を見ないことには何とも言えませんが・・・・・今のところ異常は見られません。このままでしたら大丈夫かと。」


そのことばをきいて、ししょーはほっとためいきをつきました。
そして、あんしんしているじぶんににがわらい。


「そうかい。ってことは結局おめぇが言ってた奴はアイツじゃなかったってことか。」


ですが、セバスチャンはそれにこたえずにごはんのしたくをはじめながら、


「ともかく、こんな無茶はこれきりにしていただきたいものです。」


とかおをしかめながらいいました。


「それについては大丈夫だろ？おめぇの説教がだいぶ堪えてたみてェだしな。」


「だといいのですがね・・・・・そろそろ頃合いですね。坊ちゃんをお呼びしましょう。」


「ん、じゃあ俺が呼んでくるわ。」



そういってししょーは猫のほうにはばたいていきました。
そのうしろすがたをみながら――


「ですがやはり―――恐らく坊ちゃんは――」


セバスチャンのつぶやきは、だれにもきかれることなく、ただかぜのおとにかきけさたのでした。

そう言うと二、三言葉をかわしナナシは去っていった。
続きは湯屋コミュにて…

息が上がって膝をプルプルさせたまま、無闇にサムズアップしつつ嘯いた。

言葉の意味を探るようにしばし考えた後、唐突に雄叫んだ。

まだ小刻みにプルプル震えつつも、やけに舞い上がった様子でししょーに向かってビシッと敬礼した。

猫はひとりはなれてさんぽへとでかけました。

たからさがしにむちゅうになった猫はししょーのいいつけをわすれてしまい、さらにさきへとすすんでいきます――

ちょっとしたさんぽのはずが、ずいぶんととおくまできてしまったようです。
ふと、めのまえにおとこのひとのすがたがみえました。

なにもかんがえずにちかづこうとして――

とてつもないさっきにきづいてあしをとめました。