要は、その制霊術――私は自分の術をそう呼んでいます――の応用なのです。

彼らは術者によって呼び出される際、時間と空間――時空と言うのでしたね――を超越して現れます。
時空を超越する方法は、彼らがいる場所、あるいは世界と術者のいる場所とを「扉」で繋ぎます。

私は思うのです。
召喚対象に対する「制約」よりも、この「扉」こそが召喚術の本質なのではないかと。

話がずれました。
この召喚術の「扉」を作る技術を応用できないかとアドバイスを受けたのです。
アドバイスをくれたのは、ある美しい仙狐の女性なのですが、その人についてはまたページを改めて説明させてもらうつもりです。

「門」の先の空間を常に用意しておければいいのですが、残念ながら、常に空間を維持しておくことは私の持つ魔力では到底不可能でした。
「不可能」であるからこそ、不可能ではないのかもしれませんが、それはこれからの研究や訓練で解決していけたらと思います。

宿屋の一室に「門」の出口を設定しておくのが一番簡単ですが、またいつ世界から弾き飛ばされるかわからない以上、手元にないのは不安が残ります。

常に存在する空間で、かつ、私の手の届く空間。
そんな都合のいい空間が、ありました。

そう、この首飾りです。
精霊やエンブリオ、あるいはお師匠様を宿しておけるほどの強固な場所であれば、何の魔力も宿していない日記を保存しておくことは決して難しいことではありませんでした。

お師匠様が戻るまでは、書斎として使わせてもらうことを許してください。

そう言って、俯きそれ以上は語らなかった。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。