（天使の言語）

（あるいは我々にとって至上の音楽）

（あらゆる語彙、語源を越えて、我々の及び知らぬ領域の）




わたしの主要な心理の引き金は、彼らのような理性ではない。彼らのような形而上学ではない。
彼らのように、経験主義でもない。彼らの理知性、あるいは神秘性でもない。わたしにおいて、それはただ存在への意思である。

祈りを知るひとびと。わたしの子どもたち。わたしはおまえたちを見捨てない。
だからこそ放たねばならない。真に存在するために。今はその力に満たなくとも。

わたしはおまえのためにそれをする。
おまえの祈り、生活、生命がそれを可能にする。

すべては信仰を産み直すために。

そしてわたしの善き羊飼い、
外から来た息子、

おまえのために、カミユ。

泣きながらも、部屋の中に促されて少女自身の部屋の中に戻り。
暫くは泣き続けたが、それでもやがて落ち着きを取り戻すだろう。
メルンストゥーラを渡せ、というその言葉も、やはり意味はわからぬままに、それでも溢れそうになる涙を堪えるように力が篭められ。スン、と鼻が啜られた。

それでも、何かコインに関連する行為なのだろうと推測を立てたか、すっと彼の元に差し出されるコインは。
だがしかし、取り上げようとする前に、悲鳴じみた声が、あがり。

コインを死守するように、握り締めながら。
……自分の行動が信じられない、とでもいうように呆けた直後に、また瞳に、滲む、涙。

頭を下げる。
立ち上がる。……後ずさって、距離を取る。

くるりとカミユに背を向けた。
逃げるように。……泣き顔を隠すように。……鈴蘭のコインは握り締めたままに、少女はその部屋から飛び出して――……そのまま、何処かへ。

そうして、雑談を交えながら料理の支度を終える。
時間はまだ少し早いが、いつでも夕食が出来るだろう。

と、何かを思い出したようにポンと手を打つ。

……

踵を返すカミユを見つめながら、呟くようにそう返した。

「さて、」と襟元を正すと彼女も”仕事場”へ向かう為に足を向けた。

再度突然の叫びにまたびびった。

しかしその後踵を返した青年に、夢愛は思わずその袖を掴んでしまう。

汁気を絞って取った後の高菜、ネギと焼き豚を細かく刻んだ後、熱したフライパンに、高菜、溶き卵、ごはん、ネギと焼き豚の順で入れて炒め、塩、胡椒、などで味付け。最後に少々の醤油を足したもののようだ。

きょろきょろと、青年は周囲を見回すのであった。