―航海日誌十二日目―

勝った。
あの庭師に、かつて騎士団の団長を努めていたという男に勝った。
自分一人の勝利ではない。
仲間との、仲間全員での勝利だ。

飛び回り跳ねまわり、俺たちを助けてくれた妖精のおかげだ。
風を読み、操り、場を整えてくれた旅人のおかげだ。
そして、あの大男の懐に飛び込み、臆すことなく駆け抜けた少年のおかげだ。
そこに、俺がいた意味も多少あってくれるといいのだが。

ともあれ、俺たちは最初のハードルを超えたと言っていいだろう。
多くの一揆参加者があの男の前に敗れ、躓いたと聞く。
そこを乗り越え――次に向かうのは、あの城だろうか。

――――本当に行くのか？
俺は本当の意味でハードルを乗り越えちゃいない。
最初からずっと俺の前にあるハードルを、俺は意図的に見ないようにしている。
いいのか？　こんな俺が城に乗りこむのか？
海を、取り戻さなくていいのだろうか。

（今日の日記はここで途切れている）

そんな声も全然耳に入ってないのか、高らかに笑いながらフラフラと水辺の方へ歩いていってしまうのであった・・・・

酔いが抜けずふらつくキーシュから目が離せないケンドリックである。

旅支度を整えながらそう口にする。
こうなってしまっては二手に分かれるしかないだろう。

そう言うなり、シーガルが煽っているのはラム酒だ。
「海の男でこれが嫌いな奴はいない」と本人は言うが、確かにそうなのだろう。
でなければ、こうも旨そうに酒は飲むまい。

＞キーシュ

　　　　　そしてブランチマンさん戦へ！！

鞭を取り出し地を打つ。
その姿をエンブリオ達は微妙な表情で見ていた。

肩をすくめ、担いでいた銛を軽く振ってから逆手に持ち変える。
銛を撃ち出すための構え。鯨捕りが誇りとする、戦の構えだ。

斜めに構えた帽子からいたずらな笑みが覗く。

執事が二人に、ペンギンが一匹。忘れたくても忘れられまい。
ニヤリと笑い、担いでいた銛を軽く振ってから逆手に持ち変える。
銛を撃ち出すための構え。鯨捕りが誇りとする、戦の構えだ。