休んでいたアルトに、クーパが唐突に話し掛けてくる。

申し訳無さそうに答え、謝るアルト。

そう言って次の言葉を待つアルト。クーパは話の始めこそ毎回キュウリだが、そう訊いてくる時には別の要件もある。
が、今回は話が続かなかった。クーパは「うぬぅ」と唸っているだけである。いつもと若干違う様子にアルトから口を開く。

それだけ言って立ち去ろうとするクーパ。心なしか動きがスローである。気になってしまったアルトはクーパを呼び止める。

懐かしそうに話すアルト。今、何処にいるとも知れぬ兄に想いを馳せているようだ。

クーパはどこか遠くを見つめつつ、話を続ける。アルトは黙って話を聞いていた。

そこでクーパの言葉が止まる。ここまで話を聞いたアルトには嫌でも１つの仮説が立つ。

クーパは答えない。答えないまま、止まった言葉を再び紡ぎ始める。

質問を投げ掛けるアルトの目には涙が浮かんでいる。この話が本当ならば、アルトは河童であるクーパを命の危険に晒し続けてきた事になるのだ。そう考えると、アルトは耐えられなかった。耐えられるはずがなかった。

まるで遠い事を思い出すかのように、そんな言葉を発するクーパ。アルトの目からは涙が止まらなかった。

そう言うと立ち上がり、歩き出すアルト。不思議に思い、クーパが呼び止める。

そう言って駆け出すアルト。それを慌てた様子で再びクーパが呼び止める。

それではこのPTの攻城に重大な損失が出るぞ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ですが、クーパさんの命には代えられません。
それによりこのPTから犠牲者が出るかもしれぬぞ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　皆さんはお強いし、新しくメンバーを招き入れる事もできるはずです。
お主に裏切り者の汚名が着せられるかも知れぬぞ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　私がどう扱われようと構いませんし、皆もわかってくれると信じています。
単独行動中に人斬りに遭い、命を落とすかも知れぬぞ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　…クーパさんを見殺しにするくらいなら、それも受け入れます。
待つのだ、アルト。…我の負けだ。だから待ってほしい。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　…？

問答が繰り返され、唐突に負けを宣言するクーパ。立ち去ろうとしていたアルトも足を止め、不思議そうにクーパを見つめる。

一瞬、言われた事が理解できずに立ち尽くすアルト。間も無く、再び涙が溢れる。

そう言ってアルトの目を見て話し始める。アルトも疑うつもりは無かったが、それに応えクーパを見つめ返し、黙って話に聞き入る。

アルトは黙って首を横に振る。「そうなんだろうな」とは思っていても詳しくは知らないのだ。クーパは「ふむ」と返し、話を続ける。

ちなみに我はキュウリだけでも構わんぞ、と続けようとして止める。この状況で冗談を言うのは流石に気が引けたようだ。

そこまで言って、ふぅ、と息をつくクーパ。アルトは話を聞き終え、落ち着いて内容を整理する。
…10秒足らずだろうか。じっくり、それだけの時間を使って、アルトが口を開いた。

そう言って頭を下げるクーパ。アルトの目には再び涙が浮かぶ。

深く頭を下げるアルト。そんなアルトから目を逸らすクーパ。しばし沈黙が流れる。

本当に申し訳無さそうに提案するクーパ。アルトも沈んだままの調子でそれに応える。

挨拶を終え、眠りに就こうとしたアルトが再び話し掛ける。

アルトはそう言って再びクーパを見つめる。クーパは黙って言葉の続きを待った。

それだけ言って立ち去るアルト。クーパは黙って考え込んでいた。