目にも鮮やかな平原を訪れたのも束の間の事、再び男が歩む進路は険しい山岳へと向けられた。

　一歩また一歩と進むたびに、足を運ぶ動作が緩慢になるのを自覚しながらも、措いていかれないよう銀髪の少女はエンブリオ達に励まされながらも、一生懸命についていこうとする。
　祖父たる男は先へ先へと進んでいっていたが、彼に従う白狼やセイレーンのラクレットは時折背後を振り返っては、主たる男へと連絡はしているようで、姿を完全に見失うという事態に陥ることはなかった。

　ようやく目的地と思しき場所にたどり着けば、息も絶え絶えに両手を自身の両膝に宛がっていると、間もなく他人の声が複数耳に届いてきたのである。

　どうやら、男は今度もまた山岳を進む上で同行者を探していたようで、ようやく一息つける位には回復したところで顔をあげれば知った顔と、見知らぬ二人の姿が視界に入ってきた。

一人目は、背に垂らした一房の長い青い髪が特徴的な大槍を携えた青年。
二人目は、全身金ぴかの鎧に身を包んだ正体不明な大槍を構えた人物。
三人目は、先日、山岳の旅路でも同行した白犬の彼（？）は二日ぶりになるだろうか？

　何れも身を包む装備は、男よりも性能が高そうに見えた。
だからという訳でもないのだろうが、同行者が一人、金ぴかの鎧に身を包んだ相手に、何事か話しかけたかと思えば、旅路の途中で入手したパワーストーンと呼ばれるものを幾ばくか手渡したのを確認できた。

　歌の題材にと、よく男の傍にいるラクレットが抱いていた疑問に答えるかのように補足をいれてくれた。

　なるほど、この先厳しい旅路がというのは、男自身にも関わっているのだな、と再認識していると、武具を鍛えてもらうよりも前に不意に敵影が四方より確認出来れば、四人も応戦するかのように即座に構えれば、銀髪の少女が言葉をかけるよりも前に戦闘の火蓋が切って落とされたのである。

　敵影には、岩を基としたゴーレムに、死を運ぶとされる幽霊、それに見た目には可愛らしい動物（オコジョ）に、中空を漂う鳥…

　そんな少女の呟きも戦いの喊声が飛び交う戦場にあっては掻き消えてしまうが、一人、戦いの場から離れている少女は他の者達よりも少しだけ全体を見通しやすい環境下にあった。

　他の敵と違い、雷を纏う鳥の反応だけは、どうにも敵意を感じにくい気がして、銀髪の少女の意識は自然とそちらに向けられる。

　そんな最中においても、戦いを終わらせるべく、男たちは敵を一体、また一体を打ち倒していき、やがて雷鳥一匹を残すだけとなった。そして、最後に残った雷鳥も落とすのに、そう時間は要さなかった。

　各々が契約を進めていく中、彼女も同様に赤い花びらに手をかければ、横たえる雷鳥へと添えたのであった。。。

様子を見てつぶやいてから

思案するように天を見上げ

地下にあるたくさんの牢。
空っぽの牢屋が続く。
・・・妙な空気が漂う。

・・・何だか嫌な予感がする。
静かな地下牢を探索する―――

どこからかスズメの声が聞こえてくる・・・