生命は、冷たい風と雪に囚われ眠りにつく前に、一際大きな輝きを見せ、命を繋ぐための果実を実らせる。
人々は、その実りを感謝しながら摘み取り、祝い、皆で分け合う。
自然が、大地が与えてくれる恵みに人々が感謝をすることに、世界の違いはほとんどない。
地域によっては、収穫祭と悪魔払いの祭りが一体となることもあり…それが、「Halloween」と呼ばれることもある。この世界でも、有志達の企画のもと、その祭りに則ったパーティーが開かれていた。

…そして、元いた世界から零れ落ち、いくつかの世界を転々とする少女も、元素の世界の実りの恩恵にあずかっていた。

「んー…この世界のワインもなかなかいけるじゃない♪」

山の獣の肉の串焼きと共に、赤ワインを味わう。野生の獣の肉は濃厚で、赤ワインとよく合った。
新王の横暴も、一揆軍の抵抗もあって順調ではないのだろう。今はまだ、自然豊かな地域は十分にその恩恵を味わうことが出来ている。…今は、まだ。

（…ほんと、パラダイスとかいう新しい王様は何考えてんのかしら）

　権力者たる王の立場であれば、世界の実りの、特に上澄みを味わうことは確かに可能だろう。
しかし、世界が細り、実りが細れば、その上澄みの質も落ちてしまうはずだ。
実りを豊かにすべく種を撒く者、育む者、摘み取る者…それらの共同体の上に、豊かな実りは訪れるのだから。

（…本当に世界が崩れる前に…少しでも、私が出来ることを考えないと）

瞳に決意を込めつつ、リナは一気にワインを呷った。

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