またあの子の写真を見ていた。
　できる限り感傷に浸るのは止めようと思っているのに、ついこの前にも見たばかりだったのに、見てしまった。
　最近急に冷え込んできたからだろうか。どうにも感傷的になってしまっていけない。
　仮眠用の寝床に横たわって、溜息を吐く。
　きっと今の私はとても酷い顔をしているだろう。パーティーの皆が見たら驚くだろうな。
　ああ、メランコリーに苦しむなんて私の柄じゃないのに。

　今日は『彼女』から書簡が届いた。分割世界を渡る小鳥が、はるばる私の故郷から運んでくる小さな文。近々、より詳細な連絡をこちらに寄越すらしい。『彼女』には、スギに頼んだものとは違う事柄の調査を依頼している。

　私が見て見ぬ振りをしたもの。
　私の家が利用しようとしているもの。
　そして、あの子を傷つけたもの。

　そのことについて、私はまだスギにすべてを話していない。私とあの子の間に何があったかを、ほんの少し説明しているに過ぎない。私の大事な兄弟子であり友人である彼に、私と私の家の暗部を晒す勇気はまだ無かった。だから外部の人間である『彼女』に依頼した。当然、スギと『彼女』に面識はない。スギにも彼女の存在は知らせていなかった。
　どんな情報を持ってくるだろう。あのことについては、私もほとんど関わらせてもらえなかった。……いや、関わろうとしなかったというのが正しい。あの子に対する罪悪感から逃れたくて、知らないふりをした。





　今なら分かる。
　私は、間違っていた。

（そう言ってニーヨルは、腰に巻いている布の端の刺繍に使われている硝子玉を示した）

（ふと思いついたように、それでいて真剣な様子で、問う）