水辺でしばし息抜きした後、再び地下牢へ戻った。
息抜きだったのだがあまり疲れが取れていない。
主にカッパのちょっかいのせいで気が抜けなかったのだが、
常に肩に吊るしている≪トライター≫と、フード内に納まっているエンブリオ二体の負担も決して小さくは無い。
だからと言って出て行けというつもりは毛頭もないティムラハは、肩や首を何度か回して前を見た。

フードの内にヨドとキヨ。足元近くを、やや速足気味に歩くトモ。
カッパは、腰やローブの裾にへばりついていたり、滑るように歩いたりと気まぐれに着いてくる。
般若の面は≪トライター≫に仕舞うことも考えたが、
目を離すことに不安があったため、≪トライター≫の側面に括り付けておいた。
カタ、カタと歩みに合わせ揺れる都度、乾いた音が響く。
その音に耳を傾けていたカッパが、パンと手を叩いた。

驚いて派手に飛び上がり、石畳に落ちたヨドを抱き上げ、頭から背にかけ撫でる。
水面のように震える体表の感触はなかなか心地よい。
ヨドの震えが止まるよりも先に面が鳴り止む。気にせずヨドをあやし続けた。

ティムラハはヨドをフード内に戻すと、その場にしゃがみ込む。
≪トライター≫の側面を身体と水平になるように床に置くと、
足元で顔をくしくしと擦っていたトモが顔を上げた。両手でこれでもかというほど揉み上げる。

カッパのリアクションにイラついた表情を隠さず、面に視線を送る。

ティムラハは眉に皺を寄せ上げカッパと顔を見合わせた後、
再びフードから飛び上がって落ちてしまったヨドを抱き上げた。
小さく軟らかい角の生え際を親指で擦り、角をこねるとヨドはくすぐったそうに身じろぎした。

肩を落とすカッパに、トモは欠伸のように口を大きく開けて鳴いた。

＞ティム

ウィルトは　あいてを　しんちょうに　みている。