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かちゃかちゃ
かん、かん、
がりがりがり。



「おいばばあ」


「なんさね」


「はらへった」


「昼に食ったじゃないか」


「今日あれしか食ってねぇもん！もう夜だぞ！？」


「うるさい子だねぇ…。だったらもっとウデ上げて自分で稼げるようにおなり。
そしたら好きなもん幾らでも買って食えばいいじゃないの」


「だって！時計の修理してやるっつっても皆ガキには任せらんねぇって言うんだもん！！
この前だってあたしの作った細工売ろうとしたらすげぇ睨まれたし！」


「それはお前がそんな汚いなりしてるからじゃないかね」


「うっせぇばばあ！あんたに言われたくねぇよ！」


「そうかい。じゃあ明日から風呂に入らなくても平気だね？」


「………」



かん、かん、
きりきりきり。



「…また人形作ってんのかよ」


「そうさね」


「…ッ」



がたん！



「…いつまでそんなガラクタ作ってるつもりなんだよ！？
あんたなら、その材料で装飾品でも作ったらそれで食え」


「ちょっと静かにしな」



ばこっ。



「〜〜〜〜ッ！！いっってぇ！！！」


「ったく、またそんな生意気なクチきくと今度はスパナだよ」


「……だっ、だって！ほんとのことじゃんか！
そんなの作っても、誰も！買ってなんてくれやしねぇ！」


「誰かが買おうが買わまいが、これはアタシの大事な子供だよ。
アンタは誰かに売るために子供を産むのかい？ひどい親もいたもんさね」


「………わかんねぇよ。そんなの……
そんな…メシの種にもならないもん、ずっと作るなんて…どうかしてる」


「…そうだね、とっくの昔にアタシはどうかなっちゃったんだろうねぇ」



かち、かち、



「でもね」



かた、かたん。



「アタシにとっちゃ、これが…コイツを作ることが、この世で一番好きで、大事なことなんだ。
メシのことなんか忘れちまうぐらいにね」


「…でも、腹はへるだろ。
いくらあんたがメシのこと忘れるくらい、どうしようもないバカで薄汚いババアでもさ」


「レンチの方がいいかね？」


「なんだよだってほんとにああうそウソ！！
言い過ぎたってのだからマジで取り出すなよ！！やめろ！！！」


「三度は無いよ」


「うぐ……」


「…まあ、腹が減ったら、ネジでも食うさね。
アタシも、コイツみたいにバネとゼンマイで動ければいいのにねえ」




そう言ってババアは笑ってた。

結局ババアは腹が減りすぎて死んだ。

金なんて残ってる筈もなく、工房という名のボロ小屋も売り払われーーー



結局、残ったのはこのガラクタだけだった。


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