覚悟を決めて、みんなを呼び出した。
このまま黙っているわけにはいかない。

一つ息を吐いて、出来るだけなんでもない振りをして告げる。
「悪い……せっかくここまで来たけど、もしかしたらパーティ、抜けることになるかも知れない……。」

びっくりした顔。とまどいの顔。冷静な顔。
それぞれに受け止めている三人へ、言葉を続ける。

「急な話で悪い。えっと……。」
恥ずかしい気持ちももちろんあるけど……でも。
「その、昨日なんだけど、……ごめんちょっと汚い話になるんだけど、昨日トイレいったときにパンツが汚れてて。」
「最初はその、汚れただけなのかなとか思ってたんだけど……なんか、乾いた血っぽくて。」
「病気……か、不調……なんだと思うんだ。」
「ほら、私こういう体だからどうかわからないけど……今までそんなこと無かったし、家を出るときジジィにも何か変化あったら教えるように言われてて。」
「で、それが朝もあって……今度はもうちょっと黒っぽい……の？で。」
「えっと……だからジジィにも手紙送ったんだ。だからその返事待ち……なんだけど。だからジジィが帰ってこいっていうか、大丈夫って言うか分からないけど……だから、返事帰ってくるまでしばらく私はここから動けなくなる。」
「えと……だから……そういうことで……。」
申し訳なさから小声で、だけどまくし立てるようにいって、三人の顔を見る。

困った顔。心配そうな顔。悩んだ顔。
それは……そうだろう。しばらくの間とはいえ寝食を共にした相手が突然抜けるなんて言い出すんだから。
全く迷惑な話だと思う。
それでも今後のことや、感染病だったときのことを考えれば……仕方ない。

そして気に掛けてくれていることを知って喜んでいる自分に、ちくりと良心の呵責を感じながら。

ペッピーノに肩を叩かれたフレイヤが、一番に反応を返す。
「え、あ、あの…か、身体に、おかしな所…とかは？　具合が悪い、とか、何処かが痛い、とか…」
「ん、ちょっとお腹痛い……かな？なんかボンヤリ重い感じ……？」
今のところは……だけど。

続いてサローメ。
「うーん……シヴ。アナタ、誰かと結婚したいとか、子供が欲しいとか。そんなことを考えたことはある？」
……ん？
「えっと……そりゃあある、けど……王子様との恋物語とか好きだし……。」

そしてアジェット。
「ええと……因みにシヴさん、今何歳？」
んん？
「……12歳。」

「そう。それじゃあアナタ、子供ってどうすれば出来るか……知ってる？」
……は？
「……好きになった男の人と女の人が結婚したら出来るんじゃないのか？ていうかなんだよさっきから二人して変な質問ばっかり！」

なんだなんだ三人してその『あー……』みたいな顔は！

「……本当に何も知らないなら……少しばかり教えることは憚られるけれど。子作りにはもう少し過程が必要。シヴの身体の変化は、その準備が出来たという証拠。不安になるのはわかるけれど、別段恐れるようなものじゃない。」
「…………こづ……くり？」
なに、を……いってるんだ……？
理解が追いつかなくて、オウム返しになる。

「あ、あの…ね？　シヴさんは、大人の女性の身体になった…って、事なの。シスターが、言ってた。子どもから、大人になる間の、重要な変化…なんだって。」
「大人？に？なった、のか？アレか、山羊を一頭使うお祭りとかのアレ？」
村での思い出。大人になった記念に村人総出で祝うのだと。ジジィが言っていた気がする。私は家から見るばかりだったけど。

「え、大人になると血が出るのか……？ジジィはそんなこと何にも言ってなかったぞ？え、じゃあみんなも血でるのか……？」
思わず見回すと肯定の頷きが返ってくる。

「やぎ…？わ、たしも…なるよ？　元の世界、だと、収まるまで…専用の部屋に、居たりしたけど…」
「ヤギを解体するお祭？ とても興味深い……じゃなくて。アタシもある。」
「女性は皆そうだね。ええと……とりあえず言っておくなら、その出血や腹痛はまあ、病気ではないよ。」
そして三者三様の返事と、今回のことについての答え。

「あ、そう……なんだ……へぇ……。」
「……アハハハ！なんだもうびっくりしたじゃねーか！マジ死ぬようなのだったらどうしようとか昨日悩みまくったのがバカみたいじゃん私！アハハハハ！」
大笑い。失敗した気恥ずかしさと……ほっとしたのとで。ああもう涙まで出てきた。
「うわーもー恥ずかしー。」顔が熱い。きっと耳まで真っ赤だ。

「だから、ね？　抜けるなんて、言わないで……身体が、重かったりしたら…みんなで、カバー、すれば良いし、…あの」
「多分、おじいさんからも問題ないと返事が返ってくるはず。心配は……無用。」
「うん、ごめん、ありがと。ううん、私だって抜けたくて抜ける訳じゃないし、心配ないんだったらこのまま付いていきたい。」

……良かった。ほんとに。心から思う。
……良かった。これでまだ。

「……えと、じゃあ、そういうことで……お騒がせしました……。」
恥ずかしいのとほっとしたのとで体を縮こまらせながら小さく頭を下げる。

そのあとはアジェットからそれ用の道具貰って色々教えて貰ったり、フレイヤの時の失敗談を聞いたり、私の知るお祭りの話をサローメにしたり。

……良かった。これでまだ、私は。


それに……私が、ママに？

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話の途中から追い出された上にシヴに体調を聞いたらフレイヤに叱られたペッピーノ
「解せぬ」

焚き火のそばで不寝番をしているが、どこか上の空といった様子。

ヨハネを抱きながら物思いに耽っている模様。

シヴが居るであろう、食事をした部屋へ戻る。入り口から覗き込み。

　　　　　　リンゴを食べ終わり、まったりと毛繕いをしている。

ツルンと宙へ浮かぶ