いつの間にか増えた4人目は、「ぽこ」と名乗った。

「貴方が連れてきたわけじゃ、ないのね？」
「……知らん」
苦い顔を、ひとつ。
それだけを零すと、幽は踵を返し、先へ進んでいってしまった。
「……ふぅん」
ちらと小さな影へ向けた視線は、興味か、不審か。
十羽の視線を受け、歓迎されていると取ったのか穂湖は面の表情を綻ばせる。

――面の表情が、綻ぶ？

「あらあら、お面、いくつ持ってらっしゃるんでしょうかー？」
眉を顰めた十羽の隣で、飴李がいつものペースを崩さないまま、首を傾げた。


既に姿の消えた幽を追い、3人は水辺を歩く。

この辺りは、以前にも探索をしたことがあった。
少し歩けば行き止まりになっていて、涼しげな水の音を聞きながら
体を休めるのにはちょうどいい、浅い洞窟のような場所がある。
彼は、そこに向かったのだろう。

「そういえば、また女の子ですねー」
ゆるり、穂湖の歩幅に合わせて歩きながら。
繋いだ手の先を見つめ、「おんなのこ、ですよね？」と飴李はじっと
その面を見詰める。
「……だったら、なんなの」
「いえー。ただ、それならゆーちゃん、ハーレムですねーって」
十羽の眉間に、皺が寄った。
「はーれむ、です？」
「あら、ぽこちゃんはハーレムって知りませんかー？こう、女の人がいっぱいの
中にですねー……」






洞窟までの距離は残り僅かだった。

だから、ここで一人離れたところで何も問題はあるまい。

（――静かな、ところへ）

ただ、一人になりたかった。

（慣れない。）

誰かと居ること自体は、施設の中でも普通のことだったけれど。
それはもっと規律の中に在るもので、
だからきっと、これは
――何かが違う。

「……判ってるのに、ね」

違うと感じているそれこそが、きっと、『普通』なのだと。

判ってはいても。
少女は、余りにも『普通』を知らなさすぎて。

「……大丈夫。しばらくしたら、戻るわ。探しに来られても、困る」

独りごちるように零すと、そのまま。

静かに、目を伏せた。

彼女の呟きに小首を傾げてから、思いついたようにそう尋ねる。
表情は、常の淡いもの。
けれど、少女なりに彼女が何か手掛かりを思い出せないかと、気遣っているようで。