地下牢にて一行の前に立ちはだかったラズロと名乗った男は、
再戦で討伐すると思いのほかあっさりと道をあけた。
司教といえば宗教組織でも高位の役職であるものの、
より上からの指示――大司教など――に従う立場であるはずだ。
だがあの司教は王の勅令、
若しくは王に近しい者の命令を受けていた、とその言動から推測する。

宗教は歴史とともに必ず、どこの土地にもあるものだ。
人は信じるものは違えど、祈るという行為をやめることは出来ない生物なのだろう。
されど宗教と宗教組織が必ず同じ方向を向いているとは限らない。
人は複数集まれば派閥が生まれるものであるし、
利を求める愚かな組織に成り下がることもザラにある。時に国をも巻き込んで。

この国とラズロの宗教組織の関係がどのようなものであるか。
王国という枠組みにそれが組み込まれているならトップである国王に従うのは当然。
だが宗教を国の主軸としているならば、
広く知れている王の呼称も法王等と異なりもするだろうし。
或いは王＝神などと言い出しはすまいか。
馬鹿げている。
今はあの司教の所属する宗教組織の力が
国家権力に及ばないものと位置づける程度で良いか。

因みに私の故郷では、精霊信仰が主流であった。
都市という規模での生活水準の高さ、文明の成熟具合からすると
アンバランスに感じられるかもしれないが、
精霊らと交流、相互関係があったが故に人心が離れることがなかったのだ。
人とは現金なものだからな。

大地と安寧を司る彼女は精霊といってもデランバーのような格のものではなく、
最初に生まれた精霊といわれる、神話の時代の存在だ。
神のほうは創造した世界の世話を彼女らに任せっきりだったことになっているので、
信仰対象としてはマイナーである。
生んだ親より育ての親と言えばわかりやすいだろう。

精霊は彼女から始まり、今に続いているという。
その一端が私の血にも流れているのであろうか？

説明も結構アバウト。

小さく、くすりと笑って。