Melntese冒険日記 十一日目 「秋の涼風と、病み上がり」

不思議なもので、熱に冒されて思考能力がだいぶ低下している状態でも、最低限の術式の組み立てはできるようだ。

目は虚ろ、足許はフラフラ、明らかに減った口数。そして思い出したようにけほけほこほん。
無理なものは無理だと、この日は早々に攻城は控え目にして休むことを決めた二人だったが、しかしこうも野戦状態ではタダでは休息させてくれない。
気力・体力・判断力が低下したメグを今が狩り時と見てか、早速水辺の魔物が御挨拶に攻撃魔法を飛ばしてきた。

アルの助力に依りかかりつつも、すぐさま反撃の魔法陣を組み立て、その勢いで一気にカタを付けた。
風邪で頭が働かないせいか、序盤は詠唱呪文と発動魔法が一致せず、アサッテの方向へ魔法を繰り出していたようだったが……。

一歩間違えれば、危うくダラダラと気力・体力を削られるところだったかもしれないが、事なきを得たのはこれもひとえに、普段の鍛錬の成果だろう。
或いは、こちらに飛んできてからは毎日のように、否応でも魔法を使わざるを得ない生活なので、もはや習慣的に身体に沁み付いているからだとも言える。

……とはいえ、普段と比すると命中率が著しく低下していたことは否めなかったが。


そして二人は、陽がまだ高いうちから宿泊所の門を叩いた。
給湯室を借りるとお粥を作って掻っ込み、食後に持ってきていた風邪薬を水で胃の中に流し込んだ。
そして、簡易ベッドに横になると、夢の続きを見に行った。

……こんな状態で賞金首の類に目を付けられなかったことが奇跡と言えるかもしれない。

白兎が心配そうな声色で、傍らの少女を見上げた。

努めてメグが明るい声色で応える。

メグが若干不満そうな声を上げるが、身の程を察したのかすぐに口を噤んだ。

旅の序盤で、数あるルートから星屑の小川を進むことを決めたメグにとっては耳が痛い話である。

元々、当座の心地よさと引き換えに、メグたちは星屑の小川を進んでいくメリットを背負っていたはずだ。
それはしばらく顕在化していなかっただけで、今回はそれがメグの体調であったというわけだ。

すると、メグはちょっと思案するような素振りを見せると、こう言った。

……絶句。

アルは腕組みをして、しばらくうーんうーんと唸っていたが、やがて半分諦めたように言った。

『時には回り道をしながら』二人の旅路はまだまだ続いていきます。


そんな二人を……。

……兎の外面を象った一体の悪魔が、物陰からじっと見つめていました。

話し掛けられ、2,3度まばたきをした後に無表情のまま、

そう言って、軽く一礼する

頭上の猫が眉根を寄せて、不安げな声でにゃぁと鳴いた

無表情の割に、息を弾ませて色々と聞きたそうにしてる雰囲気がある

更にあなたと兎の様子を見て、微笑みながら続けます。

近くにいたエンジェルがむすっとした顔を向けたため、声をかけています。

魔法使いの少女が杖を ぎゅっ っと握り締めた。

従者たる白い兎がベストの内ポケットから懐中時計を取り出した。

兎の吐息を掛け声に、少女はすぐさま呪文詠唱を始めた。

少女は振りかざしていた杖を下ろし、一息つきます。

ボロボロになった妖精が、雨の中ヨロヨロと歩いている。
僅かに潮の香りがするが……