「はい、出来上がり」
若草色を始めとした様々な色味の緑の糸で編まれた組紐を小さな手のひらの上に乗せる。
渡した相手――マグの目がきら、と光る。どうやら気に入ってくれたらしい。
「ローブ留めにも髪飾りにも使えるように作ったから好きにつけなさいな。例えばね、」
言いながら付け方を教えてやると真剣な視線が手元に注がれる。くすぐったいような感じがする。
その後暫く見守っていると、余程気に入ってくれたのか何度も組紐に目をやっていてやっぱりくすぐったい。
作り手冥利に尽きるというものだ。


装備の新調に使った道具を片付け、材料を片付けていてふと思い付く。
――そうだ、せっかくだし研究所の他の皆にも編んでみようか？
ちゃんとした素材からではないから本当にただの装飾品でしかないけれど。要らないと言われたら…まあ、それはその時。

―――――

イルへは銀の組紐を。
銀に淡水色を混ぜて編んだ組紐に、青の平紐で作った薔薇の花飾りを添えて。
エルへは金の組紐を。
白金に山吹と茜を混ぜて編んだ組紐に、金色のビーズを通して。
ラズへは影色の組紐を。
黒と藍鉄、暗い緑。芯に銀の丸紐を使って、所々荒い網目から銀が覗くように。
リラへは桃色の組紐を。
桃色に藤色と臙脂を混ぜて編んだ組紐に、花を模した網目を混ぜて。
スーへは夜色の組紐を。
深い紫、紺に一つ銀を混ぜて、月長石の石鈴を端に一つ。
フィアへは青の組紐を。
空と水と。幾つもの青を混ぜて、ほんの少し水の魔法を込めた端糸で花飾りを添えて。

「シェルーチェ、ソルレイユ、スキアー、ミルフローテ、ナステラ、クァルシエル、ヴェルセヴァ」
作った紐へ名を与えていく。組紐は呼ばれると淡く光って、そして黙する。
『名を持つものは強くなる』――レイの一族、月族に古くから伝わるおまじないのようなものだ。


…さて、さて。皆は気に入ってくれるだろうか？

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前回更新時ENo.1449：マグちゃんへ装飾を作らせて頂いた時のおはなし。
コミュNo.1199　のメンバーへ、各々のイメージの組紐を作って贈らせて頂きました。＼データ？ないよ！／

（手袋を着用する