きっかけは確か、夕食時の会話から。
最近攻撃が当たらないと嘆く己へ、こんな提案があったのだ。
手持ちで余らせている品に思わぬ良品があるのでは？と。
食後、思い返して手荷物を漁れば転がり落ちたのが一つの骰。
これだ。


そうして。
そんなきっかけすらすっかり忘れてしまうほど、作業に没頭していた。
時間にして約二時間程か。途中何人かが入れ替わり立ち代り作業を除いていった気配すら意に介さぬほど真剣だった。
元々不器用な性質ではない。
才能らしい才能ですらない。
ただこの作業は、なんとなく上手くいく気がしていたのだ。

そうして、試行錯誤四苦八苦すること3時間に差しかかろうとしたところで。
「よっしゃできた！！」
万歳のように諸手を上げて歓声をあげた。
一部始終を見守っていたらしい仲間がこちらを見ていることに気付くと
出来上がったばかりの作品を掌にのせ、自信満々振り向いた。



「なあなあ見てくれよ！　俺にも出来たんだぜ！！」


掌に乗っていたのは
先日レイに作成してもらったばかりの小さな黒石のピアスに
ずっと前に拾った骰子を無理やり（白衣に入ったままだったのか透明なテープで）くっつけたらしい
どうにも不恰好な代物だった。
やり遂げた達成感に満ち満ちているその背中に

「スーノ…できてない」

ふるふると小さく首を振りながら

「できてない…」

二度ほど、幼い声がかかった。


そのあと、三時間の力作を一旦解体し
付与の何たるか、を教え込まれるスーノの姿があったとかなかったとか。

首を傾げ、少年本人と、傍に居た筈のふたりを交互に見る。