瞼の裏に絵を、見た。

それは自分の夢だったのかも知れないし、
いつか何処かで食べた誰かの思い出だったのかも知れない。

光る金糸が風に乗って、伸ばした指先を擦り抜けた。
相変わらず曖昧な色をした空を背景に、その笑顔は酷く異質に浮いて見えた。
此処にいてはいけないよ、と笑う。

「何で」

子供ではあるまいし。
そう言ってただ笑う。

「そうじゃなくしたのはアンタの癖に」

ころり。
指先で口へ押し込まれる粒は甘くて、苦い。
そうだね、何もかも。

「全部、アンタのだ」

少しずつ。
少しずつ。
移し替える様に。
そう。

「でも嫌だ」

淀んで沈み切った時間の流れを、少しずつ切り崩す。
如何して。

「だって」

困った様な微笑みが閉じられた瞼に遮られる。
良いじゃないか。
その声を聞いたのは、それっきりだった。



ぱちりと目を開くと澄んだ色の夜空に、乾いた土の香り。
ゆっくりともう一度瞬きをする。
持っていたグラスを思い出した様に呷ると、
片膝を立てて座った儘固まっていた身体に少しずつ水気が戻る様な気がした。

傍らの器から昼間捕まえたエンブリオの粒を取り出す。
放り込んで、グラスから一口。
飲み下した暗赤色は鈍く燻る炎の味。
それを追う様に流れて行った琥珀色がまた喉を焼く様で、
少し息を止めた後で、
やっと軽く肩の力が抜けた。

間違って覚えたとても残念な知識の、氷山の一角のようだ

自分の服を見ながら、ぐるぐると回っている

　ゴードは鎌の刃を研いでいる。