この話をする前に、まず私の種がどういう物なのか説明せねばならない。

見た目はほぼ人と変わらないと言っていい。多少違うと言えば、長耳である事ぐらい。
それを除けばほぼ個人差で片が付く程に、人と同じである。
しかし人と比べて、身体は脆弱であり非力だ。
更に人よりも若干、ほんの少しだけ器用さがない。
子供の頃に人と遊んではよくからかわれたものだ、今でも覚えている。
その事を今も引きずっているという事はないと、一応言っておく。


さてこれでは"人の劣化種"のようだが、一点だけ人より優れている事もある。
"ある特定のエネルギーを扱う能力が先天的に優れている"…という事だ。

私の就職先はこの素質を必須としている。
外敵から身を守る為、このエネルギーを利用して戦わなければならない。
多くは武器そのものの強化やエネルギーを纏わせた武器による一撃、
或いは銃撃の弾丸として撃ち出す等、得意な武器を利用した戦い方をする。

では私達の種族は、脆弱で不器用な私達にはどんな戦い方が向いているのか。
生まれ持った素質を利用しエネルギーを転化してそれを放てば良い。
炎、或いは氷、電撃と、転化して扱える属性は多い。
敵を見極めて弱点を狙い打つ。それが私達に最も適している戦い方だ。


この力はメルンテーゼでは魔法、そしてエネルギーは魔力と呼ばれているらしい。
魔力を用いて魔法を放つ。確かに似ている。
ではここでの私の戦い方も、"魔力"を利用して"魔法"を撃つ事が理想であると言える。
最も慣れ親しんだ方法を用いた方が良い事は明白だ。




私達が扱うのを得意とするエネルギーと、"魔力"と呼ばれる力が同一の物であれば。
または私達が"魔力"を扱う事が出来たならば。








(…エンブリオがいないと何も出来ない事は、言わない方が良さそうだわ)

倒れた敵を眺めながら剣を収める。