［基本］OK.　［戦闘］OK.　［戦闘:エイド1］OK.　［戦闘:エイド3］OK.　［スキル］OK.　

なんで？
どうして？

そんな言葉ばかりが頭の中で繰り返される。
私は知っているはずだった。彼女という人間を。
1年近くもの時間を、断続的にではあるけれど、すぐ傍で見てきたのだから。

彼女が本当はとても臆病なことを知っている。
見知らぬ人と話すときは笑顔を浮かべながらも、いつもどうすれば逃げられるかを考えている。
突然殴られたらどうしよう。
もしかしたら、相手の命を一瞬で奪うような、そんな危険な異能を持っているのかもしれない。
周囲に怪しい人は居ないだろうか。
人混みの中を通るのはとても怖い。
知らない人が怖い。知らない異能が怖い。荷物やポケットの中に何を隠しているのか、それが怖い。
男性が怖い。男の人は、素手でもとても敵わないから。

……必要以上に。病的なほど過敏に。
震えを押し殺して笑顔を浮かべる。
明るい人なら害され難いはずだから。
何かされる前に相手を知れば、少しは安全なはずだから。
そんな理由でクラスメイトに話し掛けるのだ。
ほら、私は無害でしょう？
何もできない無力な相手です。
あなたの敵ではありません。
嫌わないでください。私はあなたの味方です。

それはとても歪な理由ではあったけれど。
表向きには普通の女子高生とそんなに変わらない。
どこにでもいるような、何の変哲もない女の子だった。
だって、世界は少女が考えているよりもずっと、優しい世界だったのだから。

差し伸べられた手には疑念を向けて。
他愛のない異能。
非力で華奢で、自分独りでは生活するのがやっとのような。
そして心に傷があったり、弱みの持っている人。
そういう人といる時だけは、少しだけ。ほんの少しだけ、気を休めることが出来る。


『──夜道は、死なないでね』

歪んだ願いは呪いとなって深く刻まれている。

『あなたが死んだら私も死ぬからね』

怖いのはそれだけ。
夜道にとって大事なことはそれだけだった。

それだけだった

──はずなのに。


彼女は温泉街で、元凶となる異能を取り除く方法を知った。
異能を進化させる。
それは、言い換えれば異能の変質だ。
進化の定義は様々で、進化の先がどうなるのか。
それは、彼女にとってどうでも良かったのだろう。
身体を蝕む異能さえどうにかなれば、きっとどうにかなる。
自らの犯した罪の重さに潰されそうだった夜道にとって、
僅かでも可能性があるのならば地を這ってでも縋り付きたいものだから。

そうして、異能は消え去った。
私という、イバラシティに紛れ込んだアンジニティがひとり、その時に消滅した。
そこから後のことは分からない。
夜道がどうなったのかも、異能がどうなったのかも。


それを私に伝えたのは、存在の希薄な変わった女性だった。
彼女は夜道の知り合いだという。
そして、自分は今のイバラシティからこのハザマにやってきたのだと。
記憶ではなく、精神が。
嬉野聖という物語を通じて、読み込んだのだと。

とても信じられない話ではあったが、彼女の身の上を聞くと納得もした。
提示のアナウンスで少女の声が言っていた。
『次のワールドスワップ』と。
タイミングが良すぎる気はしたけれど、
そう理解すれば納得できる部分も多い。
二度目のイバラシティ。特殊な異能。そして、
その最期についても。


彼女は語った。
今、イバラシティに夜道とその家族は居ないと。
代わりにいるのは嬉野聖ではない、別の私。春野雪代。
イバラシティの住人の記憶から降雪夜道という人物の記憶は消え、
何かしらの影響で居たと認識できている人も、辻褄があうように修正されているらしい。
薄い桃色をした短い髪の男性。
春野雪代の姿が、降雪夜道に見えたりしているそうだ。



──そう。
夜道は願いを叶えたのだ。
全て消し去ることで、死ではなく消滅という救いを自身と家族に与えることを。
何の苦しみも悲しみもない世界。
幸せが望めなくとも、不幸せもやってこない、公平な、優しい世界。
きっと夜道はそれを望んで──








……本当に？


それなら、なぜ春野雪代なんて人物が存在している？
どうして、私は今、こんなにも苦しみを感じているんだ？

彼女は幸せになったはずだった。
私という、アンジニティの改変を受けさえしなければ。
両親二人と今も平穏無事に、平和な日常を過ごしているはずだった。
こんな私が宿りさえしなければ。
友人たちと心から笑いあえたはずだった。
また逢おうという約束も叶ったはずだし、
誰かを悲しませて別れてしまうような、そんな結末も無かっただろう。
彼女は人として、誰かに愛され、不安も恐怖もなく、あんな身を焦がすような激情に塗れることもなかったはず……


……あぁ。そうか。

この感情は、そういうことか。

彼女があんなにも辛い思いをしてきたというのに。

私は、彼女が彼女であって良かったと、そう思っている。

異能として彼女の下に入り込んだことさえも。

張り切れんばかりの感情の坩堝を備え、それを私に見せてくれたこと。

悲痛な中でも、人の情や楽しさに触れ、

それに縋りそうになる自分を心の底から憎む、心の内も。

それら全てをひっくるめて、降雪夜道なのだ。

そして、そんな彼女が、私は──




















Cross+Rose

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ENo.399



そこから恋文慕はやってきたらしい。
とてもゲーム的な表現だが、
それをそうと認識すれば、私にも見えてくる。



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ここが、出口だ。
ハザマからログアウトして、CityMapに入ることでイバラシティへと至ることができる。
普通であれば叶わないルートであっても、私ならば可能なはずだ。
例え異能が進化──変質したとしても、私が消えずに残っていることには違いない。

向こうに辿り着いたとして、私がどうなってしまうのか。それは分からない。
幽霊のような状態になるのかもしれないし、
春野雪代という人物とコンタクトが取れる状態かも分からない。
なんにもならず、消滅してしまう可能性が一番高いのは確かだろう。

でも、それでも行こう。

彼女であれば……夜道であれば、迷いなく行くはずだ。
己の事なんて顧みずに。ただひたすらに。
それは異常なことなんかじゃなくて、当たり前だと言える。
消えてしまった彼女を救うためなら、なんてことはないだろう？

だって私は────















END





今回で日記は最後となります
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2021/9/30予定：第37回更新
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蹲る肉塊(251) は 尾花 を入手！
だれかのおうさま(366) は 殺生石 を入手！
虚ろな樹(399) は 尾花 を入手！
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▼エイド化候補（基本行動にてエイド化可能）
だれかのおうさま(366) のもとに キョンシー が微笑を浮かべて近づいてきます。
だれかのおうさま(366) のもとに 沼ダコ が口笛を吹きながらこちらをチラチラと見ています。
だれかのおうさま(366) のもとに ウシワカ がゆっくりと近づいてきます。
だれかのおうさま(366) のもとに イッスン がものすごい勢いで駆け寄ってきます。

特に移動せずその場に留まることにしました。

声が響く。