［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　思考が崩れて行く。掴もうとした意識が滑り抜ける。
　自我を、保てなくなる。
　偽りの存在証明が剥がれて、ばらばらに。元の、生のない形に。或いは、自己否定のアンジニティの中に引き摺られていく。

　薄らと思考の揺蕩う中で、この世界で散々接続した情報端末の画面を見た。
　ぐちゃぐちゃに混濁した意識の片隅で反応したのか、と思ったが幻覚か。

　Cross+Roseが問いかけてくる──“貴方は何処に居たいですか”

　見覚えがある問いだった。散々問いかけてきて、途中で打ち切られた質問。
　終わったものが今更見えるということはやはり、今際の際の幻覚の類だろう。

　“貴方は何処に居たいですか”
　何処。何処って。

　莉稲の隣には行けないだろう。
　陽の当たる街に居られるのも、永遠ではない。
　居られるわけ、ないのだ。
　ああ、そうだ。

　俺は普通の、屑みたいな悪人で。
　社会に容認されてはならない人間で。
　元より、居てもいなくても変わらない。

　行き先は地獄だろうか。いや、そもそもここで終わりか。

　“貴方は何処に居たいですか”

　なら──



──なんでわ■くんは、帰る理由をわたしたちに聞いちゃうの？


　暴風みたいな癇癪をぶつけるガキの声が聞こえて、いつの間にか夕暮れに照らされた春の屋上に立っていた。
　そんなこともあったっけな。今に剥がれる記憶だからか、やけに鮮明だ。





──■ーくんは、わたしたちに帰る理由を作って欲しいの？だったらわたしは作ってあげないよ！
　わーくんが本当はどうしたいかっていうのは、わたしたちとか他の誰かが決めるんじゃなくて、わーくんが自分で決めれば良いんだから！


　生意気言うんじゃねえよ。
　俺が俺の勝手で決めたら、他人が不幸になるだけだろう。


　──わたしたちを見てくれるみたいに、ちゃんと自分のことを見てあげてよ。
　　言い訳して、ごまかして、自分で言った言葉も知らんぷりしちゃってる自分を。


　別に、言い訳なんか。つーかンな事したって意味無いだろ。








──意義があるかないか、考える前に～。心がそうしたいから、そうする！ みたいな、ことだってー。
　あってもいいんじゃないでしょーかぁ。


　彼女のすぐ傍にいた少女が、やんわりと一言差し入れた。
　そうだ、年下の少女達のこんな真っ直ぐぶつけただけの発言に、俺は簡単に言いくるめられた。
　でも、だって。そんなガキじみた一言が先に浮かぶ。
　散々迷惑掛けた俺が自分の望むようにするなんて、やっぱり虫の良すぎる話だよ。








──でも。
　……一緒にさ、居てもいい間は、一緒に居てあげてほしいな。いつかは何れ、来るのかもしれないけれど。
　大切な人どっかいっちゃうの、寂しくて……誰かの代わりとか、多分、誰もなれないと思う。
　君にとっての彼女が、きっと、他の人では成り得ないように。


　切り替わるように柔和そうな男性の声がした。

　俺はいつの間にか屋上を離れ、芝生の敷かれた飲み屋で彼と酒を飲んでいる。
　……わかってたンです。でも、考えないようにしていた。その“いつか”が来る時は、必ず傷つけることになるから。
　それに、俺よりまともで、利口で、立派で、異能を持つ普通の奴がきっと居るって、わかってる。わかってるから、俺なんて忘れてそっちとよろしくやってほしいって、そう思ってしまう。








　不意に濃いコーヒーの香りが緩やかに広がっていく。よく知るようで、どこか違う喫茶店の席に俺は座っていた。

──この場所に限れば、異能があるのが特別、というわけではないと私は思うのですけどね


　店主の男が珈琲の粉に湯を注ぎながら、ぽつぽつと言葉をこぼしていく。
　誰、だ……？　知らない、と思う。
　知らないはずなのに、彼を見ると安心する。








──コーヒーを楽しむのに異能がどうたら、なんて関係無いっスからねー。
　オレはブラックが好きだし、渉兄さんは砂糖入りを飲む。
　ここならそんだけの個性でジューブンじゃないスか？


　珈琲に煙草の匂いが混じり、隣の席から軽快に笑う青年の声が言う。
　いつもいい加減なこと言うくせに、こういうことまで簡単に言うから油断ならないよな、こいつ。
　能無しの俺でも、それだけの個性が認められるだろうか。







　橙色の、眩い西日が降り注いだ。

──だから■はこの街にいていいんすよ。


　溌剌とした青年の声がした。

　俺は山の頂上で、彼と夕陽を浴びている。眩しく、暑い夏の夕暮れだった。
　この街で当たり前の能力が無い俺に、きっと深い意味はなく投げられた言葉。
　……ンな、安心させるようなこと言わないでくださいよ。居ちゃダメなんですって。








──……そっか。
　■島君は、「相手」に対してどうというよりも、「自分」に恥じない自分になりたいんだね。


　実直に、真摯に向き合う冷静な男性の声。

　その嘘のない真っ直ぐな眼が最初は怖くて、けれど信用出来るから心地よかった。
　彼のように真っ直ぐ生きられたなら。
　恥じない自分であれたなら、良かったンですけど。
　自分のことはよくわかる。
　俺はそんな人間じゃない。他者を踏み躙る卑怯な奴で、嘘つきで、無責任で、弱いままだ。








──お前が強くなりたいっていう、根っこはなんだよ。
　一人で立って歩きてえのか、誰かの手を引きてえのか……それとも、この街を守りたいってか？


　行きつけのバーで酔い潰れていた俺に、壮年の男性の声が問う。

　根っこ──一人の幸せを守りたい。平穏な生活のために、弊害になるものを無くしてやりたい。
　そういうことを、答えた気がする。気恥ずかしいことを言ったものだ。


──おー、おー、随分と身の丈に近づいて来たじゃない？　いいんだよ、そういうので。


　店主は恥ずかしそうにする俺をからかうでもなく、うんうん、と大げさに頷いて見せた。


──……お前にはまだ先があるだろ？　生きてりゃ、取り返しなんていくらでもきくんだ。


　先が、あるなら。まだ先があるなら……どんなに終わってるように見えても、可能性はあるのだろうか。


　俺は、本当にここで終わりなのか？








































































「あ！　■■くんみーつけた！　■ーくんは隠れ上手だね〜」












　西陽の差す中で少女が呼ぶ。俺は滑り台の下で膝を抱えて座り込んでいた。
　探してくれと頼んだ訳でもないのに、勝手にかくれんぼの鬼になった小さな少女が俺の真横に立つ。二本の杖で不自由な体を支えて、わざわざ俺の前に来たらしい。

「帰ろう？」
「やだ」
「じゃありいちゃんも一緒に隠れる〜」
「えっ」
「おばさんも来てもらったから、次はおばさんに鬼をしてもらえば大丈夫〜」

　屈託のない笑顔でそう言う彼女に、俺は返って意地になった。振り返ると母さんが見える。連れてきたのはきっと母さんだろう。迎えに来られたんじゃ、家出も格好がつかない。

「母さん言ってたろ。帰ってきたくないなら家閉めるって。いい子にしないとうちの子じゃないんだよ」
「りいちゃんはいい子にしてもしなくても、■■くんちの子じゃないよ〜？」
「それは、元からじゃん……」
「じゃあ、わ■くんはどこの子なの？」
「知らない。うちがうちじゃないんだから、どこにも帰れない」
「でも、一回は帰ってきたよ〜？」

　頑なに屁理屈を捏ねて、家に帰らないという主張を続けた。一度家出を決めた手前、簡単に曲げるなんて格好悪いと思っていた。

「じゃあ、わー■んがおうちに居られなくなったらうちにおいでよ〜。それで、おばさんが許してくれるまでいっしょにいるの」
「……むりだよ……」

　彼女の家は両親が共働きだからとか、そんな簡単によその家に行けないとか、そういうことじゃない。
　だって、わかっていた。帰りたくないわけじゃない。約束を破った自分が悪い。
　それを認められないからこうして滑り台の下に蹲っていることを、自分が一番よく理解していた。よその家に行ってそれが解決するわけじゃない。

「じゃあ、りいちゃんもおうち無い子になる」
「は？」

　それは、流石に駄目だろう。というか意味が無いだろう。けれど少女はそれでもいい、と言いそうな疑いのない口振りで。俺の所為で彼女みたいな体の弱い子を雨風に晒すなんて、できるわけなくて。
　観念した俺は彼女を連れて母親の元へ連れ帰る。仏頂面のごめんなさいを添えて。

「わーくん」

　帰り道、負けた足軽のような足取りで帰る俺に少女はいつもの調子で声を掛けた。

「りいちゃんは、わーくんがいつでも帰れるようにしておくからね」

---

　──掌が熱い。
　俺の指は折りたたまれていて、中にあるものが俺に熱を伝えていた。
　利き手になにかを、握っている。
　逆の手は、握られている。
　蒸発してしまいそうな意識が引っ張り上げられた。

「帰ろう」

　囁くように呼び掛ける声は凛としていた。
　誰の声か知っている。

「帰ろう、わーくん」
「────」

　──俺は、何処に居たい？
　左手を、俺は確と握り返していた。

ENo.153 六花 とのやりとり


ENo.490 雛 とのやりとり


ENo.545 東堂玄樹 とのやりとり


ENo.719 煙次 とのやりとり


ENo.880 つむじ とのやりとり


ENo.988 麻生田 とのやりとり

ItemNo.16 何か柔らかい物体 を破棄しました。
ItemNo.18 針 を破棄しました。
ItemNo.22 何か柔らかい物体 を破棄しました。
ItemNo.33 ビーフ を破棄しました。

ItemNo.4 潮のお香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 復活30 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

ナキドリ(516) に ItemNo.11 すごいお肉の燻製 を送付しました。

変化LV を 5 DOWN。（LV40⇒35、+5CP、-5FP）
領域LV を 5 DOWN。（LV30⇒25、+5CP、-5FP）

時空LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）
呪術LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）
具現LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
合成LV を 5 UP！（LV90⇒95、-5CP）

ItemNo.2 アンバサダーフレーム に ItemNo.21 オパール を合成し、アンバサダーフレーム を強化しました！（+55）
　⇒ アンバサダーフレーム／魔晶：強さ327／［効果1］煙霞45 ［効果2］煙霞45 ［効果3］充填38
　⇒ 駄物発生！駄物 を入手！

ナキドリ(516) の持つ ItemNo.21 超クールなヘッドホン に ItemNo.7 アンデシン を合成し、超クールなヘッドホン を強化しました！（+55）

ナキドリ(516) の持つ ItemNo.10 アタッシュケース から隔壁『小夜啼鳥の声』を作製しました！

サキ(768) により ItemNo.48 駄物 から装飾『心魂の波颪』を作製してもらいました！
　⇒ 心魂の波颪／装飾：強さ128／［効果1］体力10 ［効果2］－ ［効果3］－

ナキドリ(516) により ItemNo.5 頑強眼鏡 に ItemNo.30 黄水晶 を付加してもらいました！
　⇒ 博打付加！［ 6 1 6 = 13 ］通常付加
　⇒ 頑強眼鏡／魔鏡：強さ252／［効果1］耐災35 ［効果2］耐疫50 ［効果3］活力44

メル(1260) とカードを交換しました！

じだんだ。 （アースクエイク）


クリエイト：リーウェイ を研究しました！（深度1⇒2）
絶対領域 を研究しました！（深度0⇒1）
トーテンクロイツ を研究しました！（深度0⇒1）

イービルカード を習得！
インビジブルウォール を習得！
カマイタチ を習得！
タッチダウンライズ を習得！
ファルクス を習得！
ポイズンファング を習得！
クリエイト：ピッチダーク を習得！
キャリオン を習得！
オディウム を習得！
如法暗夜 を習得！
クリエイト：エキストラハンド を習得！
変幻自在 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

うさ子(266) は 殺生石 を入手！
ナキドリ(516) は リアファル を入手！
煙次(719) は オパール を入手！
サキ(768) は 殺生石 を入手！
うさ子(266) は 銀の光焔 を入手！
サキ(768) は 翠の光焔+1 を入手！
サキ(768) は 水の光焔 を入手！
ナキドリ(516) は 立派な皮 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。

［792 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［433 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［464 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［201 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［399 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［326 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［267 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［197 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［117 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［147 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［152 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［310 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［49 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［225 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［106 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［110 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［112 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［56 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［88 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［81 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［16 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［45 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［92 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［21 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

星空が映る。

　

微かな波音と共に、弦楽器の優しい音色。

　

　

　

星空のなかに、黒い裂け目。

　

その裂け目にいくつもの小さな光の玉が吸い込まれてゆく。

　

　

　




　




　

　

　

チャットが閉じられる――