［基本］OK.　［戦闘］OK.　［戦闘:エイド1］OK.　［スキル］OK.　

母さんが死んだ。


母さんと話した。

母さんを殺した。


母さんは、俺に決めさせることになったことを悔いていた。

母さんは、俺が母さんの死を選んだことを喜んでいた。

母さんは、俺を許した。


俺がずっと願っていた、許されたいという希望は、叶えられた。

母さんは、責任からも苦痛からも悔恨からも、解放された。

俺が母さんに死を許すことで、全員の希望は、叶えられた。


きっと、“円満な終わり”だった。


なのに、もうずっと、思考にモヤがかかっている。


***


御曹院大病院が連れてきてくれた植物と意思疎通ができる異能の持ち主は、
口寄せと言えばいいのか、憑依と言えばいいのか、
ほぼシームレスに相互に自動通訳してくれる力の持ち主だった。

接触媒介とかではなかったのは、その人の身の安全の意味で幸いだった。

会話に速度が出せるということは、必ずしもいいことばかりではなかったけども。


***

都合、3年弱ぶりに、俺は母さんと対話の機会を持てた。

それはつまるところ、病院側から提示されていた話のとおりに、
母さんがもうすでに人間ではないという事の証明ではあったけれど、
それよりも、通訳を介した内容の方が、俺にとっては気を引きつける内容だった。

***

母さんは、謝っていた。母さんは、罪悪感を口にした。
母さんは、死にたいと願っていた。母さんは、終わりを望んでいた。

自分からはなにひとつできない状況の中で、
無力な状況からの解放を望んでいた。

俺は、母さんにそれでも生きていてほしいと伝えた。
母さんは、何もできないのに生きているのは苦しいと言った。

俺は、何もできなくてもいいと母さんに言った。
母さんは、生きている限りまだ責任があると言った。

俺は、責任を感じるなら、どうして、自分が産んだ子どもを
捨てていこうとするんだと、母さんに怒った。

母さんは、責任があるから、責任を感じるから、苦しいのだと言った。

母さんは、満たされる前に居なくなってごめんなさいと言った。
なにもできなくなってごめんなさいと言った。

俺が、母さんに居てほしいと思う事は、要求することは、母さんを苦しめるだけだった。


俺の倍以上の年齢培われた価値観は、数十分の対話で変えられるものではなかった。
母さんは、ただ存在していることに苦痛を覚えるようになっていた。

存在しているだけで消費されていくリソースになにも返せないことが苦しいと言った。

十分貰った、俺が返す番だと伝えても、納得はしてくれなかった。

それもそうだろう。俺だって、早すぎるとは思うんだから。


でも、話していくうちに、無性に腹が立った。


腹の真ん中が熱くて、風邪をひいたときに暴走したのと同じように
視界が一瞬、真っ白になった。

振り返れば、八つ当たりだと思う。推し流したい方向が、
どこもかしこも壁で塞がれているように感じていた。

出口なんてどこにもないようにしか感じられなくて、
ただ納得がいかない感情だけが渦を巻いていた。


何もできないのは、母さんだけじゃなくて、俺だって同じなのに、
どうして、母さんだけが謝ることを許されてるんだろう。


どうして、無力を謝りながら、要求を通すことを望めるんだろう。


俺の希望や期待を、全部、なにもかも、折っておきながら。


「もういい」


俺の口を突いて出たのは、母さんが諦めたときに言ったのと、同じフレーズだった。


はじめて、決定的に、母のことを許せないと思った。

なんの話し合いの余地も、もう残っていないと思った。

全部が明らかになって、未確定な状況下や、不透明さ、
あるいは夢想の中でだけ許されていた期待は完膚なきまでに砕かれていた。


「もういい……」


頑張ってほしかった。俺のために。あなたがつくった俺のために。

でも、そんなのは俺の、俺のためのエゴでしかない。


そして、同時に、理解したのは、今の母にとっての俺の存在の重みは
もはやこれ以上には頑張れない程度にしかないということだった。


それを、とても明瞭に「わからせ」られた。



***


どうして存在なんてさせたんだ。と思った。

そんな、自分が苦しくなったら捨てるような、ひどく軽いものを。


全部がどうでもよいような気分になって、
次の瞬間、感じる全部が不快だった。

自分が生きている事実が不快だった。

微動がもたらす衣擦れが不快だった。目が見えていることが不快だった。
呼吸が不快だった。心音が不快だった。重力が不快だった。

衝動的に全部ぐちゃぐちゃにしてやりたくなった。


じゃあ死ねばいいとか、殺してやるとか、言ったような言わなかったような
どうだっただろう。自分の行動の記憶がかなり曖昧になっている箇所がある。


どうして、俺より先にあんたが解放されるのを許さなきゃいけないんだって言ったんだっけ。


(たぶん、感情の制御が効かなくなってたせいで異能が暴走しかけてたのか、横から大量の水を浴びせかけられた上で、俺は床にうつ伏せに押し倒されていた)



覚えているのは、母が、はじめてそこで謝るのをやめたことだ。


母さんは、どういうわけだか、俺には生きててほしいと言った。



***


俺にはただ生きることを頑張るだけの価値はないって宣言するに等しいことを言ったのは母さんなのに、価値のない存在として生きることは続けてほしいらしかった。

なぜ？

復讐？　俺が母を苦しめたのと同じように生きて苦しめってことだろうか。

聞いてみたけど、違うという答えだった。
苦しんでほしいわけじゃないらしい。


母さんの子どもだから？　と二問目の尋ねには、結構な沈黙が挟まった。

「……そう」

と、短い肯定の言葉があった。



***



母さんが俺に生きててほしいと願うのは愛情だとか、愛着だとか、
そういう呼ばれ方をするものなのかもしれない。


でも、たぶん、俺はそういうふうに受け取り損ねてしまった。



***


「母さんにとって」は、母さんがつくったことは、価値だろう。

でも、それは、「俺にとっての」俺の価値じゃない。

俺自身が育てた、俺の誇りじゃない。


だから、母さんがいった「生きてて」は、
母さん自身が、生きることを諦めても、死を選んでも、停止を決めても、
その後に「作品」だけは、自立して生きていってほしいって希望だと、

俺は、そう受けとった。



死んでしまえと死んでやりたいが頭の中でデッドヒートしていた気がする。



***



傷つけてやりたくなった。大事だったのに。生きることを望んでほしかったのに。
憎くて憎くて呪ってやりたくなった。幸せにしてあげられればと考えていたのに。


ぜんぶ、壊してやりたい気分だった。
ぜんぶ、失くしたような気分だった。


あと、なにが手の中に残せるんだったっけ。


怒りと怨みと呪詛で破裂してみせることくらいだったっけ。


……





本当に？


俺の、『もっとも欲しい未来』は、本当に、それだった？



***



違う。

そうじゃない。

そうじゃなかったはずだった。


壊すためにここまできたわけじゃないはずだった。


「わからせて」やりたいわけじゃなかった。


ただ、わかってほしかっただけだった。

ふりむいてほしいだけだった。



それが、何よりの高望みだとしても、手に入らないとしても、はじめた理由は、
ただ、母がこっちを見ていると思える何かがほしかったからだった。



「話し合い」を望んでいたのは、壊すためにじゃなかったはずだった。






***



「……死んでいいよ」


そう言ったのは憶えている。自分がどんな感情でそう言ったのかは、もう覚えていないけれど。


「もう、終わりでいい」
「もう、謝らないでほしい」


謝罪を受けとってあげる余裕はないな、と、判断は頭の隅を掠めていった。



母さんは、言葉の余韻が消えかかるくらいの沈黙の後に、

『ありがとう』と、言った。



わかってくれてありがとう。という意味だと、俺はその言葉を受けとった。



***


テレパスが本当のことしか伝えてこないならいいなと思う。
全体の収支がマイナスだとしても、プラスが皆無ではなかったのは藁くらいにはなる。なるかもしれない。


ずっと暴れないように押さえつけられていたので、最後に母に触れたいからと半分嘘をついて開放してもらった。



俺は、俺の異能で、かつて人間で、今は植物として扱われる『母さん』を燃やした。



***


俺は、ここに至るまで、なにもできない、どうしようもない、価値のない振る舞いを続けてきた。
そう自分を評価するしかない。

それでも、せめて今回は『できること』を、やれただろうか。
最後にひとつばかりは孝行ができただろうか。
満額の回答でなくても、望んだもののかけらを手に残せただろうか。

どれだけ相手のために何かできたかを計っても、その判断ができる「相手」はいなくて、
だからこれは全部、自分のためにそう思いこむ話でしかないけれど。


『母さん』は悲鳴をあげなかった。

樹木の身体に痛覚がなかっただけかもしれないし、本当に心の底から死にたかったのかもしれない。


『あなたが、いいこに、育って、よかった』

『しっぱい、じゃ、なかった……』

『たくさんの、ぜんぶ、間違いじゃ、……ありませんでした』


枯れ落ちていく中で聞こえた言葉には、安堵と喜色めいた色が乗って聞こえた。


***


たぶん、俺は他人の助けを得て、『できること』をして。

望んでいたもののかけらを手に入れられた。
俺は母にとっての「失敗作」という評価を受けることを免除されたと思う。




俺がずっと願っていた、許されたいという希望は、叶えられた。

母さんは、責任からも苦痛からも悔恨からも、解放された。

俺が母さんに死を許すことで、全員の希望は、叶えられた。


きっと、“円満な終わり”だった。




それは俺が望んだことで、選んだことだった。
これは、なにも残さない選択じゃなかった。






残ったものが、もはやただの真っ黒な燃え滓にしかすぎないとしても。

特に何もしませんでした。

響鳴LV を 40 DOWN。（LV40⇒0、+40CP、-40FP）
解析LV を 40 DOWN。（LV40⇒0、+40CP、-40FP）

魔術LV を 50 UP！（LV5⇒55、-50CP）
呪術LV を 55 UP！（LV0⇒55、-55CP）
料理LV を 30 UP！（LV0⇒30、-30CP）

クリエイト：スパイク を習得！
ディバウア を習得！
サモン：シャドウ を習得！
贖罪山羊 を習得！
クリエイト：ピッチダーク を習得！
サモン：ナイトメア を習得！
魔香作製 を習得！
賄飯作製 を習得！
デスグラシア を習得！
ブラッドサッカー を習得！
伏魔殿 を習得！
グルームカード を習得！
メルト を習得！
ヴァニッシュ を習得！
サバト を習得！
サモン：プロメテウス を習得！
クリムゾンブレイズ を習得！
サモン：ブードゥードール を習得！
コディシア を習得！
火衣作製 を習得！
闇飾作製 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

金のリンゴ を発見しましたがこれ以上所持できませんでした。
立派な歯 を発見しましたがこれ以上所持できませんでした。

▼エイド化候補（基本行動にてエイド化可能）
影史(1315) のもとに 足軽 が興味津々な様子で近づいてきます。

特に移動せずその場に留まることにしました。

［792 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［433 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［464 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［201 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［399 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［326 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［267 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［197 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［117 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［147 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［152 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［310 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［49 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［225 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［106 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［110 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［112 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［56 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［88 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［81 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［16 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［45 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［92 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［100 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［100 / 100］ ―― 《黒い渦》不運
［21 / 100］ ―― 《線路》駆逐



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

星空が映る。

　

微かな波音と共に、弦楽器の優しい音色。

　

　

　

星空のなかに、黒い裂け目。

　

その裂け目にいくつもの小さな光の玉が吸い込まれてゆく。

　

　

　




　




　

　

　

チャットが閉じられる――