
「ーーーーーー詳しく、聞かせて貰おうか。」
探偵は机に肘をつき、手を組むと、その上に顎を乗せて少年を見据える。
少年は震える手をグッと握ると、絞り出すような声で事情を話し始めた。
「僕のお母さんはーーーーーーナイア・アッシュトレイといいます。
僕は物心ついた時から、お母さんと二人で暮らしていました。
あまり裕福ではないし、住む場所も転々としていたので、生活には苦労していました。
お母さんはーーーーーー綺麗で優しい、お母さんでした。
でも、僕が7歳の時ーーーーーーお母さんは帰ってくるなり、僕を優しく抱きしめ、とても悲痛な声で、今すぐここから逃げなさいと言ったんです。
何が起きているのかはわかりませんでしたが、お母さんの様子から、急がなくてはいけないということはわかったので、僕は一人で外に逃げました。
でも、何が起きているのか知りたくて、僕は…僕は、裏の窓からこっそり家の中の様子を覗き見たんです。
するとーーーーーーすると、お母さんは…お母さんは!
殺されていたんです…!!!」
少年は、その輝く星の瞳いっぱいに湛えた涙を堪えていた。
一方で探偵は、湿り気など微塵も感じられない、炎の揺らぐ不気味な目で、少年を確かに見つめていた。
「ーーーーーーほう、それで。君は、その犯人が知りたくて俺に依頼を?」
そこで探偵はフッと鼻で笑い、少年の答えを待たずに続ける。
「いいや、違うね。違うよな、少年。君は知っているはずだ。犯人が誰なのか、知っているはずなんだ。そうだろう?」
探偵の目がぎらりと赫く。この目は言いたくないことまで見抜いてしまう。恐怖を覚えつつも、少年の覚悟は既に決まっていた。
「ーーーーーーはい。僕は知っています…お母さんを殺した犯人を…!」
歯を食い縛り、苦痛を音にしたような声で、少年は言った。
「それはーーーーーー僕の、父です…!!!」
探偵の口元が微かに吊り上がる。
「それで?君は親父さんの居場所を探して、それからどうする気?」
少年は答える。
「まだ、わかりません…」
答えになっていない答えだった。
「殺したい?」
恐ろしいことを宣う探偵だが、少年は驚きもせず、ただ表情を曇らせて声を振り絞る。
「…まだ、わかりません…」
膝の上で拳をぎゅっと握り、肩を硬らせる少年の姿を、探偵はじっと見つめていた。
どのくらい時間が経っただろうか。やがて、探偵は組んでいた手を解き、その手で膝を打つと、灼けた目を閉じ、言った。
「ーーーーーーわかった。君の親父さんを探す依頼、請け負ったよ。」
探偵は新しいタバコに火をつけると、煙を一つ吐き、椅子から立ち上がると、少年を見下ろしながら言った。
「それまで君、どうするんだい?その様子を見るに、君は身を隠すために女の子のフリをし、口調も変え、メイドとしてポールモール氏に雇ってもらっていたーーーーーーいや、匿って貰っていたんだろう?だが彼はもう死んだ、行く宛はあるのか?」
少年は自嘲気味に笑うと、暗い声で答えた。
「……ええ、大丈夫ですよ。意外と、子供でも生きていく術はあるので。」
ポールモール氏に匿ってもらう前、少年がどんな生き方をしていたのか。それが薄らと見える発言だった。
探偵は煙を吐く。その煙を目で追いながら、ぽつりと呟く。
「……なあ、少年。」
自棄になりかけていた少年は、曇った瞳で僅かに顔をあげる。
「…なんですか?」
探偵は少年を指差し、何事でも内容に告げた。
「君、今日から俺の助手な。」

[805 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[432 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[476 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[204 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[400 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[330 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[267 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[194 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
[118 / 500] ―― 《堤防》顕著な変化
[143 / 400] ―― 《駅舎》追尾撃破
[5 / 5] ―― 《美術館》異能増幅
[151 / 1000] ―― 《沼沢》いいものみっけ
[100 / 100] ―― 《道の駅》新商品入荷
[306 / 400] ―― 《果物屋》敢闘
[48 / 400] ―― 《黒い水》影響力奪取
[222 / 400] ―― 《源泉》鋭い眼光
[102 / 300] ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
[108 / 200] ―― 《図書館》蜂のように刺し
[107 / 200] ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
[56 / 200] ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
[86 / 100] ―― 《珈琲店》反転攻勢
[100 / 100] ―― 《屋台》更なる加護
[75 / 100] ―― 《苺畑》不安定性
[14 / 100] ―― 《荒波》強き壁
[100 / 100] ―― 《小集落》猛襲
[38 / 100] ―― 《落書き壁》リアクト
[84 / 100] ―― 《変な像》揺らぎ
[100 / 100] ―― 《白い渦》不幸
[100 / 100] ―― 《黒い渦》不運
[18 / 100] ―― 《線路》駆逐
―― Cross+Roseに映し出される。
時計台が映る。
秒針が静かに進む。