［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

するりと木漏れ日の差す陰を抜けて、それは枝葉を踏みしめ歩いていた。
その身体に託されたものはいくつもある。【哀歌の行進】に傷を負わせた事実、【望遠水槽の終点】の消滅の情報、――【不死王】の一部。
クロシェット・アストライアー・スケープゴートという男は、その名前の通り、生贄として産まれた存在だ。全ての罪、抱えきれない罪を被り、そして否定されるはずだった。実態は被るはずだったものを全て持ち逃げされ、残滓だけが残っている。故に誰が為であり、誰の為でもない。そう思っていた。
鏡写しである半身……半身と呼ぶにも烏滸がましい、腹が立つ、己を本の力で産み出しておいて、捨てていった相手。それが【鈴のなる夢】だ。故にクロシェットは、執拗に【鈴のなる夢】を追い回していた。追い回し、その精神に負荷をかけ、苦しむ様を見、ようやく生の実感を得ていた。生死の概念など、存在していないというのにだ。
星を見るようになってから、変わったと思う。星を見上げては、届かないものに微かに焦がれた。星を見上げては、考えることが増えた。己の立ち位置も悪くないのではないか、というのに至るまで、どれだけかかったのだろうか。
生死の概念が存在していないということは、即ち自由であり、不自由だ。永遠という制約を受けながら、無限の時を享受する。享受した時を楽しめるようになったのは、ここ最近の話だ。
誰かの手を取れるようになった。誰かのために、歩くことができるようになった。そして、誰かのために、ここにいる。
今、橋渡し役として働いているのは、それ相応の報酬があるからだ。そして、それ以上に、自分の感覚が変わったからだ。

「失礼しまァ～す」

扉をノックするまでもなかった。開け放たれている。

「……来たな！」
「ああ来ましたよ、そういう契約ですからね」

本来、狭間から何かを持ち帰ることは許されていない。イレギュラーだ。ここにはイレギュラーしかいない。一人は“前回”を体験した女。一柱はそもそも世界の定義に収まらない柱。一冊は世界を渡り歩き続けている渡航者。

「では、結果を聞こう。それを事実としようではないか！」
「……分かってることを聞きますか？」
「もちろんだ。記録することに意味がある。それはあなた一人のみではならない」
「隠すつもりも捨てるつもりもないっすけどね。あのカミサマに何されるか分かったもんじゃない」

噂をすれば影、いや熱だ。開け放たれているドアの向こうから、確かな視線を感じる。
クロシェットは本を取り出した。そして、開く。

「ではまず一つ。【哀歌の行進】の構成データを譲渡する」
「承知した。コピーでいいか？」
「いいんじゃないか？」

本である、とはそういうことだ。大きく開かれたページにのたうっている文字はまるで読めやしないが、彼らが解析すれば何かしらの記録になるのだろう。クロシェットにとっては大したものではなく、採取してこいと言われたからしただけのものにすぎない。
機械に挟まれる本体を見ながら、次の話をする。

「……で、次ですね。【望遠水槽の終点】は消滅しました。【鈴のなる夢】が“動いた”ためです」
「クロト。動かした、が正しいのよ。そういう力を使ったの」
「……外から見てるなら入ってきたらどうです？」

声に従い、微かに浮いた少女が音もなく入り込んでくる。その瞳は好奇心に燃えて白く輝いていた。
この神に掛けられた縄は未だ感触として残っている。なんなら、このまま外されないのではないかという気すらしていた。面白いものを観察するのが好きそうな顔をしているし、そういう神には心当たりがあるからだ。

「よろしい。想定以上の結果だ」
「……まあ、俺もちょっと驚きましたね」

ある程度の覚悟、もしくは、どうしようもないもの。クロシェットは分かっていた。あれは本当に、自分を置いてどこかへと逝こうとしている。
けれど、それを今更追いかけようと、止めようとは思わなかった。もう決別した、二度と交わらない。そう思っていた。
現実は全くそうではなく、チートを使って引きずり出されてこのザマだ。

「良い方向に向くか……あるいは、さてな」
「……じゃあ、最後の……これは俺じゃなくて、【鈴のなる夢】からのお仕事ですよ」

コピー機から取り出された本を捲る。
どす黒いシミがぽつんとあるページが開かれるのと同時に、椅子に掛けていた大日向が身を乗り出した。

「――現物か！！」
「ああ。ちょうどいいタイミングでパチったみたいなんでね」

呪われた血。その現物。少しばかり、時間は遡る。



目の前で食い殺すのを眺めていた。全てが終わり、そして様々をいなし、彼らがやり取りするのを眺めていた。
僅かな隙間の時間で、小瓶に指を突っ込み、そこから液体をすくい取るのを見ていた。そして、これを自分に垂らすのも。

「……よく採ってきたな」
「採ったわけじゃない。差し出してもらっただけだ」
「大して変わらねえだろ。今更繕うなよ」

いっぱい飲めやと煽られたからね、と続け、スズヒコは本にシミができるのを見つめている。これは呪われた従者の血そのものだ。

「……それで、それをそのまま向こうに提出して、構造解析とPCRと……まあ向こうが思いつく限りのことはやるでしょう。その結果を持って帰ってきて」
「命令すんな、と言いたいところですけど……そういう契約なんだよなあ～。あーあ、言いたくないけどお任せください」
「俺だって言われたくないな。それはどうも」

言質は取った。主人は確かに言った。従者の呪いを治したい、それだけだと。かと言って、彼自身には使っても治せる異能はなく、しかし離れて探すことはしたくない、と。
離れている内にグノウが何か起こるのは嫌だ、と。

「……まっっっっずい！！」

本を閉じ、自分のものにした瞬間、強烈な嫌悪感がクロシェットを襲った。たまによくあることだ。食あたりに近いが、ここまでゲロマズの何かを少なくともクロシェットは自分のものにしたことがない。

「そんなに」
「いや……ゲロマズでしょ、何これ？」
「俺はそうでもなかったけどな……慣れちゃったか」

さてね、と、言葉は続く。

「俺は確かに迦楼羅くんに頼まれたからね。そういう方法、考えるのはこちらの専門」
「全くだ。それで？抗体でも作るの？」
「……ああ、抗体のことは失念してたな……」

病巣があるなら切除すればいい。そしてそれを閉じ込めて、それごと消えてしまえばいい。
もとより既に終わりに向かう身体なら、それをなげうつことに何ら抵抗はなかった。光は先があるものの前に存在していればよく、その身体を蝕む闇はひっそりと消えてしまえば良い。
つまり、【不死王】ノーライフキングそのものを喰らってしまおうと言うのが計画のひとつだった。どこまで、どのように、分離は可能なのか、様々な懸念は存在しているが、それが手っ取り早い。時間がないのなら、そうするのが何よりも早い。

「……さすがにただ食ったら、マジで中たりそうな気はするけど？」
「そうだね。なので普通に抗体はいかにも自分の案ですっツラで採用しようと思う」
「人の気分を逆撫でするのが本当にうまいな」

ワクチンというものがある。予め無毒化した病原体を肉体に取り込むことで、それに対する肉体の抵抗作用を獲得する、人体構造を利用したシステムだ。
もしかしたら、ということを考えて、ずっと闇を操る力は保持したままにしていた。もしくは、あの足元を走り回っていたシェイドをちょっと齧ったかもしれない。ある程度の闇耐性を得、そして本人から“そのもの”を得た。無毒化されていなかろうが、今からそうしてしまえばよい。そして擬似的な免疫を獲得させることで、再び舞い戻ることを防げるはずだ。

「持っているものをフル活用しない手はないからね、“俺”」
「……ああはいはい、せいぜい頑張って、“俺”」

そして一時間が経つ前に、クロシェットはその場を抜け出した。
結果がどうなろうと知ったことではなかったが、託されたものは持ち出す約束になっていた。



ほんの僅かなものを殖やし、解析し、読み解き、そして答えを用意する。
研究室には、そういうことに長けている人間が揃っていた。

「話は聞いたな！我々の目的は完遂されたに近いが、次は負債を変換する時間だ！」

高らかな声の下、学生たちが走り回っている。することは違えど、向いている方向は完全に一緒だ。
あとは引き上げるだけと言っても過言ではない。ただ、齎されたものに対して向き合い、解き明かし、詳らかに明らかにすることは、基本的に彼らの好奇心を的確に満たす。そして分かるはずの何かは、異世界の何かだ。この先出会う可能性はごく僅かであるとはいえ、目の前の面白そうなものをみすみす見逃すような女でも、集団でもない。

「異能データベースの総当たりをして一致するものを探しましたが、やはりないですね。類似しているもののリストは送信済みです」
「PCRかけましたあ！あとは待ってから特殊泳動……は、先輩に任せていいですか！」
「いいですよ。データベースから適当に抜いてそれっぽいものと一緒に流しましょう」

異界の怪異を相手にしようとしている。それだけが今分かることだった。
それ以外のことは全てこれから解き明かす。解き明かしてみせるのだ。それが学び手、あるいはそれを導くものとしての心構えだ。

「……活発ですこと。先生はお手伝いにならないので？」
「手伝えたら跳ね除けてでもやっているんだがな。ボクはあいにくこの大学の礎石だ」
「礎石ねえ」

好き勝手にやりたい放題する権利を全て投げ捨て、大日向深知はこのイバラシティに大学をまるごと作り出すという手段を選んだ。ある意味で全く手段を選ばないと言えば、如何にも彼らの長だ。追求のためなら何をしてもいいと思っているな、とやんわりと思う。

「それが最善である。拠点を用意し、適切な学生をピックしてきた方が早い。そう判断しただけのことだ」
「……ああハイ。ほんと研究者って狂ってますね」

似たようなことを言う人間に、ついさっき会ってきたばかりだ。
時間の流れが異なっている場所で、どこまで彼らが追い縋るのか。クロシェットも興味がないわけではなかった。人間が足掻こうとするのは、純粋に見下ろしていたい。そうやって過ごしてきた。見下ろし続けて、ずっと“他人”の傷を抉ってきた。

「……人手が足りなかったら使ってどうぞ。こう見えて、一応知識はあるんですよ、機材壊さない程度のね」
「それはいいことを聞いたな。使い潰してやろうか？」
「お断りします。それこそうっかり手が滑って無意味なDNAバンドをガッと作っちゃうかも～」
「その時は対価を引き下げるだけだとも」

そういえば何を対価にするかを先送りにしていたな、ということに気づいて、クロシェットは大日向の居室の椅子に深く座り、瞑目した。
答えは決まっているようなものだったが、すぐにそれを口にするのも癪だった。逃走劇と執着と決別の終着点がすぐそこにある。

（やっぱり邪魔というか、その意志に反することしかやってられないんだろうな、俺は）

消え逝こうとする者。概念を持たないが故に、あてもなくふらついているもの。恐らく最後まで相容れないまま、この物語は終焉を迎える。

ENo.165 フェデルタ とのやりとり


ENo.502 ナックラヴィー とのやりとり

ItemNo.27 エナジー棒 を食べました！
　体調が 1 回復！（16⇒17）
　今回の全戦闘において 活力10 防御10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

フェデルタ(165) から 釘 を受け取りました。

自然LV を 5 UP！（LV35⇒40、-5CP）
付加LV を 5 UP！（LV56⇒61、-5CP）

フェデルタ(165) の持つ ItemNo.40 すごい羽 に ItemNo.41 すごい羽 を合成し、活力漲る千輪菊 に変化させました！
グノウ(909) の持つ ItemNo.12 立派な皮 に ItemNo.21 上質な布 を合成し、活力漲る黒帯 に変化させました！

ソラ(639) により ItemNo.19 ブロッサムシグネットリング に ItemNo.9 雪花石膏 を付加してもらいました！
　⇒ ブロッサムシグネットリング／装飾：強さ436／［効果1］耐災35 ［効果2］煙霞45 ［効果3］活力44

スシキ(226) とカードを交換しました！

天佑神助 （スペシャルタイム）


アンチドート を研究しました！（深度0⇒1）
アンチドート を研究しました！（深度1⇒2）
アンチドート を研究しました！（深度2⇒3）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

フェデルタ(165) は 天青石 を入手！
スズヒコ(244) は 匂辛夷 を入手！
グノウ(909) は 匂辛夷 を入手！
迦楼羅(931) は 天青石 を入手！
迦楼羅(931) は 金の光焔 を入手！
スズヒコ(244) は ビーフ を入手！
スズヒコ(244) は 欠けた刃+2 を入手！
迦楼羅(931) は 桃色の果実 を入手！
グノウ(909) は ビーフ を入手！
スズヒコ(244) は 強い牙 を入手！
迦楼羅(931) は ビーフ を入手！

▼エイド化候補（基本行動にてエイド化可能）
迦楼羅(931) のもとに シンデレラ が恥ずかしそうに近づいてきます。
迦楼羅(931) のもとに 大蟷螂 がものすごい勢いで駆け寄ってきます。
迦楼羅(931) のもとに ピーチさん がものすごい勢いで駆け寄ってきます。
迦楼羅(931) のもとに ロックドラゴン が口笛を吹きながらこちらをチラチラと見ています。

グノウ(909) に移動を委ねました。

ツクナミ区 P-13（森林）に移動！（体調17⇒16）
ツクナミ区 Q-13（森林）に移動！（体調16⇒15）
ツクナミ区 P-13（森林）に移動！（体調15⇒14）
ツクナミ区 O-13（山岳）に移動！（体調14⇒13）
ツクナミ区 O-12（森林）に移動！（体調13⇒12）

MISSION!!
ツクナミ区 R-13：オオトラ が発生！
　　 - フェデルタ(165) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ
　　 - スズヒコ(244) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ
　　 - グノウ(909) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ
　　 - 迦楼羅(931) が経由した ツクナミ区 R-13：オオトラ

［817 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［442 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［479 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［200 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［408 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［327 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［265 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［192 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［111 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［145 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［145 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［304 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［41 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［208 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［92 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［104 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［96 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［46 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［80 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［62 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［9 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［100 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［24 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［45 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ
［2 / 100］ ―― 《白い渦》不幸
［88 / 100］ ―― 《黒い渦》不運



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

ザザッ――

　








少女がつぶやく。

　

　

　





雑音で声がかき消える。

　

　

　





　

　

　




　

　

　

チャットが閉じられる――

ホルモン焼きのお店、オオトラ。

明かりの灯るお店、香ばしい良い匂いも漂ってくる。

　





店から男が出てくる。

　

こちらを睨みつける･･･




　






（初発生のイベント戦：異能FP+5！生産FP+5！）