［基本］OK.　［戦闘］OK.　［戦闘:エイド1］OK.　［戦闘:エイド2］OK.　［戦闘:エイド3］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

長い年月をかけて植物に覆い隠されたのだろう、廃墟にもみえる擁壁にアリステアが何やらカードを翳すと、その一部が奥に引き込まれ扉が現れた。

唐突なハイテクさに驚きながら、長く暗いトンネルを進む。途中、幾度か何かをくぐり抜ける違和感があった。侵入者を感知する結界か。入り口のハイテクさから考えると、正規のルートから入らなければ即座にセキュリティが起動する、そんな仕組みに違いない。軍とか、そういう所で使うレベルの。

トンネルの先には孤島には場違いな検疫所があった。俺はそこでいくつかの検査と、この島での注意事項の説明を受けた。

その手の検査は俺が最もされたくないことの一つであり、正直言って逃げたい気分だった。けれど、アリステアの言うことを信じるなら、俺がどのような生き物かわかったところで何も起きない筈なのだ。それでも気が気ではなかったが。言葉を選ばずに言えば、試されてる気さえした。

そんな葛藤を知ってか知らずか、スタッフは笑顔で俺に応じる。どうやら事がスムーズに運ぶように段取りはつけてあったらしい。

それは同時に検査でわかる範囲とはいえ俺のことを知る人間が増えるということなのだが……うまいことやってくれてるのだろう。そう、信じる他ない。

我ながら警戒心が低いと思う。数十年、いやもっとか。張り詰めた糸にも限界があったのかもしれない。それでいて、一人で生きることを選べない、俺は半端な生き物だった。

暫く待つと一枚のカードを渡された。紐で首にかけられるようになっている。イベントのスタッフとかがつけている、アレだな。ここにいる間は身につけておかなければならないらしい。カードには顔写真と意味のわからねぇ何かの模様が刻まれている。こういう方面の術とテクノロジーには俺はあまり詳しくねぇんだよな。

写真の中の自分は緊張と不快感で微妙すぎる顔をしていた。クソ。写真を撮ると知ってればもっとマシな顔をしたのに。っていうかいつ撮ったんだ。

文句でもタレようかとアリステアを探すと、彼女はスタッフと歓談していた。その様子からしてここには何度も来ているようだった。俺とあの塔で落ち合う前からか？ それならそれで、彼女が俺に接近した理由も腑に落ちる。早い話が好奇心だ。

純粋な好奇心なら、悪くない。
俺たちは、それからどうするかなのだから。


『イツくんが嫌じゃなければ、私はあなたと友達でいたいよ。互いに秘密はあって当たり前だし、信用できないことだってあるかもしれない。そんなの、他人同士だから当たり前だって、長く生きてるあなたの方が知っていそうなものだけど』


──そうだ。同じだ。友人でいたいのは俺も同じ。完全に信用はできないが、この縁は失いたくない。そんな、曖昧さでいいんだ。

考え込んでいた俺に声がかかる。


「準備できたって。青い海の絶景コテージだよっ。いこいこ！」

「は？ いや、何？？ こてーじて……」


俺ら何しにここに来たんだっけ。
そういや、何も聞いてなかったな。


♦︎


不思議な光景だった。

この島は火山だ。外輪山が島の八割程を囲み、二時間もかからず周囲を一周できるカルデラのすり鉢の中で、百人と少しの人々が暮らしている。

集落はひと昔前の田舎のような穏やかな空気に包まれていた。田畑があり家畜がいて、澄んだ瞳の子供達は釣り竿を手に走り回っていた。

挨拶にとアリステアが立ち寄った家。庭には船にいた護衛君の姿が見えた。彼もこちらに気づき、会釈を返す。気まずそうな顔をして。無理もないか。船の上で俺が取り乱した体たらくを思えば、気まずいのは俺も同じだった。

アリステアは確かに、あなたと同じ流浪の民がここには住んでいる、と言っていた。けれど、ここに住む人たちはどう見ても街に住む殆どのヒトと変わらない姿で、話す言葉はこの辺りの国で最も話されている、つまり俺が今アリステアと交わしている言語と変わらなかった。時折、ヒトにはあまり見られない髪色のヤツがいるくらいで、それも相当に薄くなった血の痕跡のように思えた。

もし、本当に俺と同じようなヤツがいたら俺はどうしていただろう。最後の群れを出て、百二十年、百三十年か。今この平和な時代まで生き延びた同族に俺は出会ったことがない。

それでも、この時まで生き残っているのなら。見た目にヒトとも変わらず出会っても気づかなかったのかもしれない。もしそんなヤツがいるなら別に逢えなくてもいい。ただ生き延びてくれと俺は思う。

俺がツノと尾を隠す手段を得たのはかなりの幸運だった。それは群れに残されたアーティファクトで、戦う勇気がない俺を逃すために預けられた最後の一組だったのだから。

それだけに、ここに住む連中は恐らく違う。僅かに俺と同じ血を引いているかもしれないが、ヒトと同じ姿をしている。

……それならどうにかして街に住むこともできるのではないか？
何かが、いや、誰かが彼らをここに留まらせている？
何かを保存するために。
良くない想像が沸き起こる。

人体実験みてぇなことをやる連中といえば真っ先に上がるのが神聖聖絶団だ。

戦中の神聖聖絶団は国お抱えのカルト集団だったが、戦後は戦犯として処理され今では公には触れるのもタブーみてぇな扱いになっている。

それでもヒトには五十年そこらは長い。世代は変わり昔を知らない若者がカルトに夢中になるには十分な時間だ。奴らの残党は今でも悪魔狩りと称して活動を続けて、時折特異な見目を持つものを魔女だ悪魔だと捕まえては凄惨な事件を起こしている。

連中は今の法の下ではあからさまな犯罪集団だが、それでも活動を続けられるのは大物の支援者がいるからだと噂されている。どこにそのカルトかぶれがいるかもわからない。俺が探査を常に警戒していたのも彼らの存在が一番の理由だ。

そこまで考えて俺は頭を振った。
流石に聖絶団が絡んでいるという線はない。
なら、どこか……

もらったスイカを抱え、海へと歩く。アリステアとうわべは他愛もない会話をして。



そうして辿り着いた先。
僅かに途切れたカルデラの外へ。
急峻な小径を注意深く降りると視界が広がる。
どこまでも澄んだエメラルドの海と、白く素朴なコテージ。

俺たち二人が過ごす宿がそこにはあった。


♦︎


「イツくんはさ、意外と隠し事が下手だよね。ずっと気難しい顔してたもん」


コテージから海に張り出したデッキの上で、水着に着替えたアリステアがスイカにかぶりつきながら俺を茶化す。


「ほっぺたにスイカの種いっぱいつけて偉そうに言われてもな…… ったりめぇだろ、聞きたいことだらけで何から聞いていいのか。そうだな、ここに住んでる連中は相当に血が薄いってことなんだよな？」


そのままではこれ以上食べ進めないと気づいたアリステアは、バキッと真っ二つにスイカを割ると再度かぶりつく。


「ん〜。もぐもぐ。そう」

「食ってから話せ。ハムスターかよ」


一息に残りの果肉を削り取ると、アリステアはすっと真面目な顔になって俺に向き合った。


「あのね、あなたと同じ人々が住んでる、ってイツくんを騙すようなこと言ってごめんね」


確かにあの発言は俺の好奇心を惹きつけるためだとしても不用意だった。どちらかといえば俺のトラウマを刺激した、という意味で。正直その事に今は突っ込まれたくない。だから。


「別にそれは気にしてないさ。ただここがどういう場所なのかは知りたい」

「そうね。ここの子供達は自分達のルーツも知らないと思う。人間の平均より少し長生きで、時々変わった髪色だったり魔力の操作が上手い人がいるくらいで。食べるものも生活も、大多数の人間と変わらない」

「なら、どうしてだ？ こんな場所に厳重に、いや……」


言い淀んだ言葉の先を繋ぐように彼女は答える。


「閉じ込めてはいないよ。船にいた彼のように街に出たくなったら出て行くこともできる。でも、市井に隠れた聖絶団の持つ探査の魔道具の中には、ほんの少しの変わった魔力にさえ反応するものがあるの」

「そこまでか。忌々しいことだな……」

「だから……術の扱いや身を守る手段を学んで、探査を妨害する魔道具も渡して。イツくんの持っているものとは比べ物にならないくらい、簡易的なものだけどね。ここの人達にはそれで十分だから」


「俺の……」言いかけて本来ツノの生えているあたりに触れる。長く伸ばした髪の中に硬い感触。一組の輪は今も俺をただのヒトに見せている。


「まぁ、そういうのがねぇと俺はとっくにくたばってるだろうし。にしても、それもアリスの勘か？」

「ううん。研究所の主任さんがね。イツくんと私が実験室に出入りしたときのデータに僅かに不自然な部分があるって気づいて。それで何か空間を操作するような魔道具を持っていないかって聞かれて。でもそんなのって、国宝級のアーティファクトしかないじゃない」


俺は大きくため息をついた。


「はーーん。なるほどな。研究バカのアイツのことだ。そこらへんに出回ってる認可済みの家電や魔道具の影響なら調べがつくからな。はー。マジか。技術の進歩ってヤツを舐めてたかもしれねぇ。それで俺には直接聞いてこないとなると。あっ、アイツは契…で縛っ……口が硬いから大丈夫な筈だ」

「けいや…ん？ えっ、まさかイツくん、契約術が使えるの？ 違法だって知ってるよね？ あっ、でも興味あるな。契約術とか今は調べても資料がないんだよ！」


アリステアは立ち上がり俺の両肩を掴むとガタガタと揺らした。


「はっ、うっ、ちょ、ま。食いつくのそこぉ？！」


♦︎


ボロからでたボロだった。

俺はアリステアに契約術の初歩を教えるハメになったが、天才聖女様の彼女をもってしてもちっとも発動しなかったので心底安心した。こんなものは身につけてはならない。

ま、種明かしをすれば俺ら一族の特性を利用しているからヒトには扱えないのはわかっていた。というタネは話していないが、ウソは教えていないから大丈夫だ。せいぜい悔しがりやがれ。


「あー、くやしー！」

「おい、ばか、濡れる。ああっ」

「海なんだもん、濡れてあたりまえでしょ！」


海に飛び込んだアリステアがざばざばと水を跳ね上げる。無邪気にもみえる彼女が、俺を元気づけようとしているのは流石に想像がついた。

あれからもう少し詳しい話も聞いた。ここにいる連中の血が薄いのは、目で見てわかる特徴のある者は真っ先に狩られたからだ。考えてみれば当然のことだった。

カルト連中の使う術を俺たちが使えば、彼らに狩られる者を見つけ逃すこともできる。そうして真実を知る人々と国連によってこの島が守られているらしい。戦勝国の思惑なんかもあるんだろうが、正直俺の知った事ではない。なんにせよ、害されないならまあいい。

結局俺の立場は変わらない。この島の者にさえ俺の本当を明かすことはできない。表向きにはヒトと見た目が異なるものは滅んだとされているからだ。教育というものすごい力は、俺たちがいた事、どんな姿をしていたかも、その血を引く人々にさえ忘れさせようとしている。

実際に殺して回った聖絶団、知識と歴史から消そうとしている国々。手段は異なれど、俺たちは……いや、俺は存在しないものになりつつあるのだ。

人々が過去に、かつての殺戮に向き合う時がくれば。いずれ変わるのかもしれないが。それにはまだ、時間がかかるだろう。


「現実は、こんなものだよな……」


遠く水平線に目を向ければ、傾き始めた日差しが海原を照らし光の帯を伸ばしている。大気と海の境目で光線は複雑に屈折して、水底に揺れ動く模様を描く。その上を小さな魚の群れが列をなし、続けてアリステアが水中を滑るように追ってゆく。水底に落ちる彼女の影をひとたび意識すると、ふっと水の存在が曖昧になった。今や水中の生き物たちは、宙に浮き空を飛んでいるように俺には思えた。

ENo.1152 現実 とのやりとり

ItemNo.37 ユーカリのなんかスースーするやつ を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 強撃12 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

現実(1152) に ItemNo.31 強靭な皮 を送付しました。

現実(1152) から 上質な布 を受け取りました。

響鳴LV を 20 DOWN。（LV30⇒10、+20CP、-20FP）

武術LV を 15 UP！（LV20⇒35、-15CP）
具現LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
変化LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
料理LV を 5 UP！（LV48⇒53、-5CP）

現実(1152) の持つ ItemNo.29 活力漲る魔力溢れる滑々な壊れた銀の斧 から装飾『淡く光る鈴』を作製しました！

ItemNo.28 ビーフ から料理『かみかみわかめ』をつくりました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 3 3 2 = 8 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ かみかみわかめ／料理：強さ31／［効果1］活力6 ［効果2］体力6 ［効果3］防御6

ItemNo.32 ビーフ から料理『普通のジャーキー』をつくりました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 3 6 1 = 10 ］成功！料理の付加効果のLVが増加！
　⇒ 普通のジャーキー／料理：強さ31／［効果1］活力6 ［効果2］体力6 ［効果3］防御6


黒髪の少女(566) とカードを交換しました！

『タニモリ』 （アサシネイト）


ハデスポムグラネイト を研究しました！（深度0⇒1）
ヘカトンケイル を研究しました！（深度0⇒1）
ディクリースアイズ を研究しました！（深度1⇒2）

サモン：ナイト を習得！
魔力漏出 を習得！
クリエイト：エキストラハンド を習得！
サモン：ヒーロー を習得！
変幻自在 を習得！
サモン：アルケミスト を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

イツ(990) は 冬虫夏草 を入手！
イツ(990) は 光小晶 を入手！
イツ(990) は ビーフ を入手！

ツクナミ区 D-11（草原）に移動！（体調7⇒6）
ツクナミ区 D-12（森林）に移動！（体調6⇒5）
ツクナミ区 D-13（森林）に移動！（体調5⇒4）

［822 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［445 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［490 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［199 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［407 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［325 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［250 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［181 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［105 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［148 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［144 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［288 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［40 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［199 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［84 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［99 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［78 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［45 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［76 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［55 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［1 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［83 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［13 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［38 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

空には変わらず光の玉が、星々を模している。

次第に集まり、大きな光になっていく･･･

　

　

　









　





　

　

　

集まった光がそれぞれ何かの形を成し、地上に落ちてゆく。





　

　

　





　

　

　

チャットが閉じられる――