［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「……そ。
　叔父さん、ちゃんと全部話したんだ」



正面に座る女性――楪葉からの、問う様な眼差しを受け。
男は一つ、確と。頷きを返した。







旧知の仲である楪葉との再会。

そして叔父から“目的”の話を告白されたあの日から、数週間が経過していた。



からりとした秋晴れの続いていた日々は、次第に芯を凍えさせる様な冷たさを孕み始め。
一歩一歩、冬と言う季節が近づいてきている事を実感させる、そんな時期。
そんな冬一歩手前の季節であるにも関わらず、桃色の花で染まる通りがタニモリ区には実在する。

桜並木のさんぽみち。

365日、一日と枯れる事無く淡い桃色の花を咲かせ続ける通りは
タニモリ区のちょっとしたスポットとなっており、連日それなりに賑わいのある場所で。
今日ものんびり散歩をしたりベンチに休憩にやってきている通行人が、ちらほらと見受けられた。
男も幾度か散歩がてらに足を運んだ事があるが、
日中でも夕方でも日が落ちてからでも、通りが無人である瞬間を見た事が無い様な気すらする。
自分の住む区にそんな人気スポットが存在する事に驚いたものだ。


……ともあれ、ここはそんな人気スポットの桜並木、ではなく。


そんなさんぽみちを一望する事の叶う、少し離れた場所に位置するカフェ――VIVA桜道。


冷えて乾燥した外気から隔離されたこの空間は空調のおかげで程よい室温を保たれており、
昼時を過ぎた店内には、お茶の時間を楽しむ女性客がちらほらと見受けられている。



その店内の片隅、桜並木を見下ろす事の出来る窓側の席に二人の姿はあった。






連絡をよこしたのは、楪葉の方からだ。


自分とは交換していなかった為に叔父伝いでそれを告げられたのは数日前。
今日は有給って事で良いぞ、と冗談混じりなその声に見送られ、到着したのはつい先程。

彼女の方が先に到着こそしていたものの注文するのは揃ってからと決めていた様で、
着席と同時に手渡されたメニューを一瞥、店員に二人分の注文を伝え、
それらが到着するまで間、ここで漸く互いの連絡先を教えあったところで漸く落ち着いた。


味方と断定出来ず、必要以上に関わりを持つつもりがなかったのだけれど、
叔父の話を聞いた事で少々事情が変わったのだ。
情報は多いに越した事がなく、少なくとも、
うちの事情を知っている少女の存在は全く使えないという事はない。


（……不本意ではあるけど）

……そう、こちらから望んで友好関係を築こうと言う気はないのだけれど。


少なくとも彼女は、自分に対しては兎も角、
こと叔父に関しては、その身を案じている様に見受けられたのだ。





自分はホットコーヒーのブラック、楪葉の方はホットカフェラテ。
それらが店員の手によって運ばれてきた。

役目を終えたその人が下がった所でカップの持ち手に手を伸ばし、
楪葉の方はスティックシュガーの封を開けてはさらりと投入、くるくるとかき混ぜる。


「叔父さんと、ちゃんと話した？」


……合間に、窺う様な楪葉の問いかけ。

スプーンがカフェラテの中に砂糖を溶かしていく、リズミカルに掠める心地よい軽い音。
その背景音を遠ざけて、近状を話し始めたのは、そんな頃合いだっただろう。



一通り、彼女に事情を話したとはいえ、言う程事細かではない。

彼女がどこまで信用できるか、既知であるかを知るべく。
あくまでもざっくりと、端的とした説明に留めたつもりであった。


……けれども、

叔父の目的、その本意を仄めかす様に明かした所でも、彼女の方も動じる様子を見せなかった。


彼女はあまり感情を面に出すタイプではないけれど、
それでも、微かな驚き、息遣いの乱れ。その類いが垣間見える事は無く。



おそらく彼女は、既に知らされていたと見て間違い無さそうだと、悟る。




「……予想通りって言いたげな反応だな」


あんまりにも知ってましたな反応を見せられたからだろうか、
自ずと挟んだ言葉は棘のあるものになってしまった様に思う。
そんな本意を察してか、ちらと視線を持ち上げた彼女は露骨に肩を竦めてみせた。


「まあね。
　でも、意外だなと思った事もあるよ。そこまでガッツリ話したんだーとか」

「その言い回しからして、ユズは知ってた訳だ」

「……全部ではない。って言っても信じてもらえるかは分からないけど。
　私が聞いてたのは『反感を抱いて家出してきた』って事と、『叔父さんが実家に対して敵意を向けてる』事だけ」


それを聞いただけでも、危険な状況である事。危険な事を仕出かそうとしている事を想像出来るのは、
彼女自身が“枢木家がそういう家柄である事を知っている”からである。
そんな事情を知っていて、枢木家程拘束が厳しくない、
且つ枢木家との繋がりが未だに残っている彼女を協力者として抜擢したのだろう。


「その上で、ちょっとだけ叔父さんに枢木家の動向の話は流してた。
　ただ、私が怪しまれない範囲でって釘を刺されていたからそう頻繁には行えなかったけど」


だから、自分がこの街にやって来ている情報は見落としていたという事だと言う。


そもそも、楪葉の家は枢木家程情報の扱いに慣れた家系ではない。
情報を専門に扱い生業としてきた枢木の家と異なり、彼女の家はどちらかと言えば実働隊寄りだ。
自分よりも華奢な身なりではあるけれど、武術的な実力で言えばおそらく自分は彼女には敵わない。

叔父もそれを知った上で協力してもらっていたのだろうが、
如何せん協力者の安全面を優先してしまっているため、情報の扱いが完璧でないと見て取れる。


（……そこは俺が補っていくべきか）

現状、彼女は叔父回りの事に少なからず気を配ってくれていることは確か。
だったら彼女がいる事前提でその穴を埋める様に動く方が得策ではあるだろう。




「……それで、これからどうするの？」




返事をせずに思考に沈んだ為だろう。
まるで思考を読んだかの様な、彼女の問いかけに男もゆるりと顔を上げた。















「それで……これからどうすればいい？」





奇しくもそれは、あの日。
自分が叔父に向けた問いかけと全く同じものであったのだ。



「どうもしなくていい、お前はいつも通り過ごしてくれ」


特別どうという事は無いのだと、叔父が間髪入れずに返答する。


「さっきも言った通り、俺はお前を巻き込みたくないと思ってるからさ。
　止めずに居てくれなければ俺はそれで十分だし、
　お前は気にせずに、これまで通り俺の仕事の補佐をしてくれればいいよ」

「…………」


気にせず、というのは些か無理があると思うのだが。
それでも、妙な動きを見せて万一にも実家に悟られる様な事が
あってはならないと言う事も、分かっていた。

手持ち無沙汰に、空になった互いのカップを一ヶ所にまとめてしないながら
視線だけは叔父の方に。乳白色の明かりに照らされる横顔を確と見上げたままでいれば――




「……実は、今だから話すけどここだけの話。

　ちょっと動きづらい状況になっててさ」




「え」




納得をした矢先に、突然のこの発言。


無意識に体が強張ったのが自分でも分かる。
弾かれる様に叔父に目を向ければ、少しばかり苦い表情。

その視線をもう少しばかり下げれば、彼の手が先日怪我していた位置をゆるりと撫でていた。


――それで察せられない程、鈍くはない。



さっと、血の気が引く。



まさか既にギリギリの危ない状況なのでは……、





「や、勘違いするなよ。大丈夫、命の危険って訳じゃない。
　ただ……実家に居る時に見かけた事のあるやつを、島内で見かけた」


「イバラシティに？」


こちらの怪訝な声音での反芻に、叔父は瞼を落とす事で頷きの代わりを見せた。


「楪葉の話からしても……俺が確認しに行った感じからしても、俺達を捜しにきた様子ではなかった。
　別件でイバラシティに赴いてるって感じだったな。流石に内容までは把握出来なかったけど……
　……ただ、見知った顔が全くいないのと、離れているとは言え同じ島内に奴らがいるのとじゃ状況が全く違うだろ？」


……取りあえず、今すぐ危険が迫っている状況と言う事ではないらしい。
こちらからも叔父に向けて一つ、頷く。


「だから当分は、俺も息を潜めて穏便に過ごすつもりで居る。
　……お前に危ない事はやめて〜って泣きつかれちまったしな」

「泣いてない」



きっぱりと断言してやれば叔父はけらけらと笑ってくれた。


……その表情から見て取れる限り、余程追いつめられている状況では内容で安心する。
叔父が先程説明した現状は、事実と見て間違い無さそうだ。



「…………」



そんな一連の安堵の様が、果たして叔父にはどう映ったのだろうか。

手を伸ばされ、徐に。わしゃりわしゃりと頭を撫でられてしまった。


「っ、ちょっと」

「あはは、大丈夫。
　叔父さんがついてるから怖くないぞ〜」

「唐突な子供扱い止めろ」


髪が乱れるから、と文句を言いつつも。

何故だかその手を振り払う事ができなかった。


不思議と、実家に居る頃の距離感に戻った様な気がして。



離れ難いと思ってしまったからかもしれない……と、今になって。思う。















「…………」



「……、トキー？」


顔を上げたのに、言葉がそこから続かなかったせいだろう。

カップの縁に口を付けカフェラテを味わっていた彼女が一度それを置き、
小さな手の平がゆらゆらと己の眼前で揺れている。
それを煩わしげに軽く払ってから、「やめろ」と文句が後に続いた。


「……何。
　もしかして状況があんまり良くないとか、そういう？」

「そう言う訳じゃない」


いちいち勘の良い昔馴染みの頼もしさだが、今ばかりはあまり有難いと感じられない。
あくまでも冷静に首を振ってみせてから、口元を隠す様に、男もカップに口付けた。

少しばかり時間をおいたおかげか、或いはこの店の客への気遣いなのか。
ブラックコーヒーは程よい温度で、とても飲みやすい。


「……どうもしない。
　俺はこれからも、預かり屋店主の叔父の手伝いとして、あそこで生活を送るだけ」



それだけだ、と断言してみせる。


暫し、じっと探る様な視線を向けてきていた楪葉であったが、
やがては「そっか」と、思いの外あっさり引き下がってくれたのだった。




「……まあ、なんと言うか」


「？」


「私もこれで、叔父さんの事。少なからず心配だったから」







「心配性のあんたが傍に居てくれるなら、私も安心だよ」







叔父さん、ああ見えて危なっかしいから。



苦笑を滲ませこの場に居ない叔父に付いて語る彼女の言葉に、

「全くだ」と。


“それ”を痛感する男も、頷かざるをえなかった。

ENo.153 十九号 とのやりとり


ENo.947 もも とのやりとり

ItemNo.7 毛 を破棄しました。
ItemNo.8 毛 を破棄しました。
ItemNo.9 針 を破棄しました。
ItemNo.10 鉄くず を破棄しました。
ItemNo.22 ネジ を破棄しました。

ItemNo.40 白檀の塗香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 回復40 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

命術LV を 2 UP！（LV38⇒40、-2CP）
幻術LV を 3 UP！（LV37⇒40、-3CP）
料理LV を 5 UP！（LV47⇒52、-5CP）

十九号(153) の持つ ItemNo.18 ビーフ から料理『ナスとじゃがいものムサカ』をつくりました！
　⇒ 美酒佳肴！［ 1 1 3 = 5 ］大失敗！なんか妙だ！！！！料理の効果1が「自滅」に変化！

ウドンナ(1124) とカードを交換しました！

炒め野菜 （スヴィニール）


贖罪山羊 を研究しました！（深度1⇒2）
伏魔殿 を研究しました！（深度0⇒1）
伏魔殿 を研究しました！（深度1⇒2）

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

十九号(153) は 芹 を入手！
枢木(296) は 花韮 を入手！
十九号(153) は 赤い羽根 を入手！
十九号(153) は ふさふさ を入手！

十九号(153) に移動を委ねました。

アライ区 G-6（道路）に移動！（体調15⇒14）
アライ区 G-7（山岳）に移動！（体調14⇒13）
アライ区 G-8（山岳）に移動！（体調13⇒12）
アライ区 F-8（山岳）に移動！（体調12⇒11）
アライ区 E-8（沼地）に移動！（体調11⇒10）

採集はできませんでした。
　　 - 十九号(153) の選択は ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》（ベースキャンプ外のため無効）

［821 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［448 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［490 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［196 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［408 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［323 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［249 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［181 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［104 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［146 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［145 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［287 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［40 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［181 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［80 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［97 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［73 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［45 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［66 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢
［100 / 100］ ―― 《屋台》更なる加護
［55 / 100］ ―― 《苺畑》不安定性
［1 / 100］ ―― 《荒波》強き壁
［62 / 100］ ―― 《小集落》猛襲
［0 / 100］ ―― 《落書き壁》リアクト
［20 / 100］ ―― 《変な像》揺らぎ



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

･･･夜空が見える。

　

　

　

どこからともなく無数の光の玉が空へと浮かび上がり、

真っ暗な空間を星々のように彩りはじめる。

　

　

　

少しずつ、少しずつ、

光が寄り添い集まっていくように見える。