［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

「うさ子ちゃんは、帰ったらやりたいことある？」

　聳え立つ瓦礫の隙間を縫うように道が続く。見通しは悪く、ところどころ地面は泥濘んで安定が悪い。
　進路から大きく外れない範囲で、なにか使えそうな物や救助難民がいないか探しながら莉稲が尋ねた。
　相変わらず俺は手を引かれている。

「ンー……平和に過ごしたい、ですかね。莉稲お姉ちゃんは？」
「うーん。わたしも、普通に過ごせたらそれでいいなあ、って思っちゃうなあ」
「ま、普通が一番だジョー」

　後ろから着いてきていた鰐淵さんが同意する。
　尤もだ。こんな状況になってしまうと、碌でもないばかりだったあの日々もマシに思える。ここから出られたら、流れ込んでくる記憶のようにまたあの街で過ごせるのだろうか。
　赤い空を見上げながら、莉稲は「あ、でも」と付け足した。

「わーくんと話したいことは、あるかな」
「渉お兄ちゃんと？　それって、どんな話です？」

　俺に、と言われれば気になる。
　問いかけると莉稲はこちらを向いて、ただ笑った。

「えへへ、内緒」
「なンでェ、気になるジョー」

　内緒。そう言われてしまえば内容を察することはできないし、同時に色んな想像もした。
　実は引っ越す予定がある、好きな人がいる、なんならもう付き合っている、手術を受ける予定がある、就職先が決まった、本当は足に障害なんてなかった、猫を飼いたい、卵焼き以外も不自由なく作れるようになった、コンビニの新商品が美味しい、面白い映画を見た、明日の天気は晴れらしい、人気漫画が完結した、……大きなことも、小さなことも。今より先の未来を生きた記憶だけはあるのに、何にも見当がつかなかった。

「あ、分かれ道だ」

　顔を上げると莉稲が言う通り、道が分かたれていた。高く積み上がった瓦礫を分岐点として、二方向に開けている。

「ちょっと調べてみます」

　Cross+Roseを起動させ、マップを表示する。一応瓦礫の上を乗り越えれば別のルートも進めるが、普段足に障害を持つ莉稲にこうした道をわざわざ進ませるのは憚られた。この世界で見られる調子の良さならきっと難なく歩けるだろうとは思うが、それでもだ。

「えーと。あっちは先に水地が広がっていて進めそうにないですね」
「なら進む方角は決まりだジョー」

　なら、ここは自分の出番だ。
　鰐淵さんに頷き、莉稲の手を離す。

「じゃあ私、ちょっと先に見てきます！」

　うさ子だって機動力は悪くない。莉稲よりもできるだけ率先して行き先の偵察をすることにしていた。
　先んじて倒壊したビルや乗用車の残骸に挟まれた道へ足を踏み出す。
　その次の瞬間から世界が一変した。

「うさ子ちゃん！！」

　突然だった。
　背後から切迫した莉稲の声がした。
　気づいた時には積み上がった瓦礫の山と縫うように張り巡らされた道が頭上にあり、足は赤い空へ向いていた。自分の身体が宙へ放り出されていることに遅れて気がつく。180度回転した視界。何かを放り投げ飛ばしたように地上の莉稲が両腕を振り上げていた。
　彼女の必死の形相を目が捉えた途端。

「──！！！」

　俺の視界は閃光に白く染め上げられた。
　耳を劈く炸裂音が轟き、浮いた小さな身体は飛距離を伸ばす。
　理解はすべて遅れてやってきた。怒涛の如く押し寄せた展開を、俺は転がり伏せってから起き上がるまで何一つわかっちゃいなかった。

「りい、りいね、りい！！！」

　掻き消される声を何度も吐き出して駆け出す。くらくらする視界に構わず、よろけながらも脚を動かした。

「莉稲！！！」

　土煙の中に見えた人影へ一目散に走り寄る。
　呼吸が止まった。
　倒れた莉稲から真新しい血がどくどくと流れ出ている。

「治癒術だ！　早く！！」

　鰐淵さんの声に我に返る。「蒲ノ穂」を地面に突き立てた。治癒の陣が広がり、柔らかな光で彼女を包み込む。
　杖を地面に刺したまま、力なく横たわる彼女の上半身を抱き起こす。そして、だらしなく垂れた手を握った。
　まだ温かい。まだ。

「なンで……！！」

　手放しそうになる自我を強く抑え強く留める。
　おかしくなりそうだった。信じられなかった。訳が分からなかった。身体中が震える。なんで。どうしてこうなった？　さっきまで普通に歩いてて。先に出たのは俺で。何の前触れもなかった。莉稲がこんなことになるなんておかしい。絶対におかしい。どうして？

「……ぁ」

　莉稲が小さく呻いた。

「莉稲！　生きてるか、生きてるな！？」

　弱々しく息を吐き出す彼女に声を掛け続ける。彼女は虚ろな瞳でこちらを見ると、微かに口角を上げた。

「わー、くん」

　ぽつ、ぽつと彼女は「卯島渉」に呼びかけた。

「よかっ、……やっと、助けられ、た」
「なに、言ってんだよ」

　俺は首を振って彼女の手を固く握っていた。目を細めて彼女は力なく笑う。

「……わたし、きっと。すきなひと、の、ため……がんばるちから、だったんだ」

　弱々しい呼吸の合間に紡がれる言葉一つ一つが受け入れ難かった。瀕死の状態で、今にも頽れそうな最中に言う台詞が全部自分に向けられているなど、どうしたら享受できるだろう。

「よかった」

　薄らと開いていた瞼が徐々に閉じられる。

「おい、やめろ、起きろよ、りい」

　頭の中が真っ白だった。口が勝手に動いていた。

「ふざけるなよ。ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな……」

　壊れたテープレコーダーのように同じ言葉を繰り返す。

「こんな、ゴミ屑に命張るとか許さねェよ」

　彼女は俺のせせこましい期待を裏切って、何度も優れた人間性を見せつけてきた。何度も俺を置い抜かして、遥か離れた場所から朗らかに逞しく慈しみ笑い掛けてきた。この先もそういうことはあるのだろう、そう思わなかったわけじゃない。
　だとしても。こんな裏切られ方は、あんまりだ。
　彼女は幸せになるべきなのだ。

「また、<ZOO>に遊び行くンだろ。おぶって行ってやるから」

　祈るように約束をする。

「4階でも7階でも、屋上でも連れて行ってやる」

　吐き出す息が落ち着かない。

「なあ、卵焼き食わせてくれよ」

　我儘をひとつ口にしてみた。

「死ぬなよお……」

　ぼろぼろとみっともなく泣いていた。
　固く握る俺の手に返る力はあまりに頼りない。どんな願いも祈りも無力だった。こんなに近くにいるのに、目の前で生気が失われていく。
　最後に短く血を吐いて、莉稲はそれきり静かになった。

ENo.107 メリル/ミノリ とのやりとり


ENo.388 ユイノ とのやりとり


ENo.541 マテバ とのやりとり


ENo.545 東堂玄樹 とのやりとり


ENo.1033 斎 とのやりとり

ItemNo.24 ビーフ を破棄しました。
ItemNo.29 ビーフ を破棄しました。
ItemNo.30 ビーフ を破棄しました。

ナキドリ(516) に ItemNo.4 曹灰長石 を手渡ししました。

ItemNo.17 里のチョコレート菓子 を食べました！
　体調が 1 回復！（21⇒22）
　今回の全戦闘において 貫撃13 器用13 深手27 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

ナキドリ(516) に ItemNo.36 燐灰石 を送付しました。

時空LV を 10 DOWN。（LV10⇒0、+10CP、-10FP）
付加LV を 16 DOWN。（LV16⇒0、+16CP、-16FP）
料理LV を 5 DOWN。（LV5⇒0、+5CP、-5FP）

武術LV を 5 UP！（LV0⇒5、-5CP）
魔術LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
変化LV を 5 UP！（LV30⇒35、-5CP）
合成LV を 26 UP！（LV0⇒26、-26CP）

ナキドリ(516) の持つ ItemNo.3 方解石 から防具『明日への勇気』を作製しました！
ケムルス(719) の持つ ItemNo.3 怨恨石 から法衣『闇煙纏うコート』を作製しました！

ウドンナ(1124) とカードを交換しました！

油揚げ （スヴィニール）


タイムリーバー を研究しました！（深度0⇒1）
ムスケルクラフト を研究しました！（深度0⇒1）
ムスケルクラフト を研究しました！（深度1⇒2）

肉体変調耐性 を習得！
☆カーボナイズ を習得！
☆ナタナエル を習得！
☆エンチャントウェポン を習得！
☆初習得ボーナス：各FPが6増加した！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

うさ子(266) は 立派な蓮根 を入手！
ナキドリ(516) は イヌサフラン を入手！
ケムルス(719) は 奇妙な骨 を入手！
サキ(768) は 奇妙な骨 を入手！
サキ(768) は 闇小晶 を入手！
うさ子(266) は 闇小晶 を入手！
ナキドリ(516) は 造花 を入手！
ナキドリ(516) は おさかな を入手！

チナミ区 D-2（ベースキャンプ）に戻りました！
体調が全回復しました！

『ウシ区 E-19：チェックポイント《黒い水》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - うさ子(266) の選択は ウシ区 E-19：チェックポイント《黒い水》

MISSION!!
リュウジン区 L-3：チェックポイント《果物屋》 を選択！
　　 - うさ子(266) の選択は リュウジン区 L-3：チェックポイント《果物屋》

［860 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［443 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［193 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［400 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［320 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［225 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［161 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［91 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［144 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［129 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［221 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［92 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［58 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［64 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［51 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［23 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域
［14 / 100］ ―― 《珈琲店》反転攻勢



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　





　




久しぶりにチャット画面に映るふたり。

　





引きつったような表情。

　







　





　





　

　

　

　




　

　

　

不自然にチャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！