俯いて膝を抱えてじっとしていれば異能が暴走することは無かった。
誰かを傷つける事も、自分が傷つくことも。



日に焼けて黄色くなった古い畳の目地をよく覚えている。

―とし坊、ちょっと出かけない？―

叔母は母にすら置いて行かれた自分を億劫にも思わず世話を焼いてくれた。
夏の暑い日、新月の夜。街灯も無い真っ暗な道を手を引かれて歩く。
砂利道、その後はあぜ道。
何のために出かけるのか、聞き返しもしなかった。
惨めな気持ちと、慣れない環境にまたいつ異能が
暴走するのかという不安ばかりが頭を埋めていた。

―ついたよ。…ね、上見てごらん。―



促されて見上げたそこには。
真っ暗な田んぼの真ん中、促されるまま見上げた空には満天の星空が広がっていて。
時折流れるほうき星を夢中で数えたのを覚えている。



それが、星を好きになった理由のひとつだった。
空を見上げている間は俯かないでいられるから。


そして、もうひとつは。
どんなに手を伸ばしても届かないとわかっているから。

異能が制御出来るようになっても両親は家に戻ってこなかった。
与えられたのは、猫と多めの小遣いと、せがんで貸してもらった遊び場と。
本当に欲しいのはそんなものじゃなかったけれど。
何度一緒にいて欲しいとせがんでも結果は同じだった。
一番欲しいものに手が届く事はなかった。
自分の声すら届いたことはなかった。


「嫌な事、思い出した。」
誰にともなくごちる。
星も見えやしない、赤く淀んだ空を見上げて。
昔の自分なら出来ていたのに。
期待しないこと、諦めること。




一人は慣れてる
嘘に決まってる



選ばれし存在
だったらよかったなってだけ



誰もお前を顧みない
そんなこと知ってる
僕だってこんな奴嫌いだ


けれど、それじゃあ
このやり場のない気持ちをどうしたらいいんだろうか。



息を吸って、吐く。もう一度自分に言い聞かせる。


置いていかれたって平気で


声が届かないなんていつもの事で


向き合ってもらえないのも



独りだって



慣れてる

▲	フタバ 「お、いいな！ 俺たち、ヒーローになろうぜ！！」

▲	Cross+Roseにメッセージが届く。

	「――――……」 画面に映し出されるのは、ハレ高の制服を着た背の高い男。 表情の動かない狐面は不気味に見えるかもしれない。が。 その面は、天藍祭で雀部稲生が使っていたものと同じ見た目をしている。

	雀部 「我孫子、ごめん。」

	開口一番。そう短く告げるのは間違いなく雀部の声だ。 それは真摯な謝罪のようにも、事務的な挨拶のようにも聞こえる。 表情は見えない。狐はわらっている。

	雀部 「こっち来てからおれの異能おかしかったやろ。 　強すぎて、自分のもんじゃないみたいってずっと思ってた。 　おれが知らんうちに、お前のこと傷つけてる時もあったんちゃう。 　―――あったよな。」

	雀部 「せやから、ちょっと別行動取らしてもらった。 　ごめんな。何も言わんと勝手して。 　でもこのままお前に嫌な思いさせんの、おれが嫌やったから。」

	自分には口当たりが良く。相手には耳触りが良いであろう言葉を並べる。 遠すぎず、近すぎず。互いの距離をはかりながら。

	雀部 「我孫子、友達いっぱいいるやろ。 　そん中で喧嘩強い異能持ちの奴とかに、連絡、…取ってさ、」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お前がおれ以外の誰かと。 「守ってもらい。 　お前のバリア強いけど、一人で居たら、やっぱ危ないと思うし。」 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　息が苦しい。

	雀部 「うん。 　 　じゃあ。 　また、連絡する。」

	メッセージが終わる直前の、独特な空気。 　それは、日の落ちた帰り道で二人が別れる際、 　雀部が少しだけ見せる愚図ついた雰囲気によく似ていた。

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チナミ区 O-16：梅楽園

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立ちはだかるもの 動く梅木

チナミ区 O-16 周辺：梅楽園

周囲は不気味な静けさに包まれています。

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ハザマに生きるもの ガルーダ

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TeamNo.765 ENo.765 ルリ

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