［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

　



【幕間】




――1月10日。


本来であれば日曜日の夜で、自宅に招いていた彼がそろそろ帰るであろう頃合い。
そんなタイミングをまるで狙ったかの様に、瞬きを挟んだ次の瞬間には紅い世界に立っていた。

穏やかであたたかい時間から一転、
あんまりなタイミングの重なりっぷりに溜息だって零したくなる。
傍らを見遣れば、こちらの世界では異能によって獣の姿をとっている彼の姿。
そんな彼もまた、苦虫を噛み潰した様な顔をしていたものだから、
きっと同じ事を考えているであろう事を予想し、口端から苦笑が滲んだ。


だって、そうだ。
クリスマスからお正月の三が日を過ぎるまで、何も起こらなかったのだから。
年に二度しかない、彼と長期間一緒にいられる時間をゆったり過ごす事が叶い。
何の決着もついていないと頭では理解していながらも、
どこかでもうこの世界に呼ばれる事がなければ良いのになんて、
もしこちらでの記憶が引き継がれるのであれば思っていたに違いないと、確信すら抱ける程だ。

……それも、まあ。
この通り、現実とはかくも無情だった訳で。




「…………」


こうなってしまっては、仕方がない。

ベースキャンプだからと気を緩める事が出来なくなってしまった昨今の事、
早々に気持ちを切り替えなければと、深呼吸を一つ挟み。


「行こう、佳仁さん」


彼に真っ直ぐに向き合っただろう。










――思い返せば、この世界に始めてやって来たのは12月だったか。
という事は既にこの世界に足を踏み入れてから１年は経過した事になるのだ。

沢山の事があった様で、意外にもあっという間に過ぎた様に思う。



いつも通りの預かり屋の仕事。
新規のお客さんも何人か足を運んでくれて、少しずつ少しずつ、
街の住人として溶け込んでいる様に錯覚する。……なんて行ったら、おかしいだろうか。

けれど、そんな感覚があるのは嘘ではない。
まだこの街にやって来て10年も満たない自分は、未だに自身を余所ものと思う節があった。
けれども最近は、近所の人にも声をかけられる事が増え、散歩をすれば見知った顔を見かける事が多くなり。
少しずつ、去年よりも今年の方が、この街の居心地の良さを感じ入る様になった気がする。


若いながらにアイドル稼業に努める少女は、初めて輝いた時の思い出を預けてくれた。

女性の様な姿をした美容師の男は、次なる持ち主を探すべく家族の作品を預けてくれた。

各地を歩いて回るバンドマンの男は、今まで積み重ねて来た努力の結晶を預けてくれた。

今もこうして傍らに居てくれる恋人は、この街に来て一人頑張って来た軌跡を預けてくれた。


広告は掲載していない。
なるべく有名にならない様にと、それでも■■の為にと密かに続けて来た仕事であるが、
人との縁なのか、或いは少しずつ、知名度が上がっているのか。


……有難い事だ。

本当に、有難い事。




そんな風に少しずつ、この事務所にも客足が増えて来たけれど。

……今年もまた、叔父は帰って来てはくれなかった。



この件に関しては、去年や一昨年となんら変わりはなく。
彼からの連絡や音沙汰は何もなかった。

だからと言って、待つのを止めたりはしないけれど。
諦めるつもりも毛頭無いけれど。

……こんなに、経ってしまってはと。
少なからず不安に思っても、仕方が無いと言うものだろう。




――そう言えば、
叔父の事を彼にまだ話せていないのを思い出す。

伝えたら、どんな顔をするだろう。
相談には乗ってくれるだろうか。


彼は自分には沢山の事を教えてくれたけれど、
自分は未だ、彼に教えていない事の方が多い現状。


……そろそろ、決意をしなければならないだろう。





……それとは、別に。
楪葉もこの一年は顔を出さなかったと思い返す。

彼には彼で頼み事をしているけれど、年に一度は接触していた。
こうして彼女からの連絡が無いと言うのも些か珍しい。

今度、こちらからも連絡を入れる様にしよう。







仕事方面は、上々。

自分一人になったときとは比べ物にならない程、
店主らしい振る舞いが出来る様になったのではという自負すらある。

なんて言ったら、笑われてしまうだろうか。



置いといて。




それとは別にプライベートの方でも、今年は随分と“初めて”の経験が多かった様に思う。





まず一つが、水族館。
己の誕生日に、彼が連れて行ってくれたのが初めてだったのだ。


結局彼に言えずじまいだったけれど、正直、最初は水族館には苦手な意識しかなかった。

海は嫌いではない。水棲生物も嫌いどころか寧ろ好きな方。
ただ、単純な事。
海を知らずに狭い世界で生きて死んでいく生物を平静に見られないと思っていた。

狭い世界しか知らない。
人間の勝手な都合で閉じた生活を強いられて。

まるで自分達が元居た世界の様だと思えて仕方がなかったのである。


……けれども、不思議な事に。

その日を境にその苦手意識は少しずつ少しずつ、払拭されていった。



想像していたよりも、ずっと、その世界はきらきらと輝いていたからだ。



魚達は活き活きとしていた。
悠々と泳いでいた。
男の想像していた世界とはまるで違ったその空間、
男が想像していたよりも、ずっと明るいその世界は、

男の中で深く沈んでいた影に光を差し込んでくれたのだ。


……彼も随分と楽しそうで、はしゃぐ姿はこどもの様で。
また違った一面を目にする事が出来た様な気もしている。
それと、ああ言った場所の料理が美味しいと言う発見もあった。
次は何か別の物を頼みたいと思うのも、我ながら珍しい事だったろう。

いつも気ままに散歩に向かう先は人工的な場所よりも自然に満ちた場所の方だったのだけれど、
偶には、水族館に足を向けるのも良いかもしれないと思ったのは――此処だけの話である。


ああでも、散歩もいいけれど。

また彼と一緒に、行きたい。







次なる初めての経験は、音楽フェスだ。

……自分で言っていてアレだけれど、
まるで自分と程遠かった世界に踏み込む機会がやってくるとは正直想像もしていなかった。

だからきっかけは、彼の友人である稀崎さんから。
勢いのあるお誘いで決まったもの。


この日まではフェスと言う存在がある事と単語の意味位しか男には知識が無かった。
始めこそ勝手が分からなかったが、その場に立ち、
その場に居る皆と音楽を楽しみ始めれば意外にも自然と体は動いてしまうもので。

新鮮な熱気に包まれた世界は、とても楽しいものだった。


見知った子も、歌っていた。

一度、関わった事のある女の子。
それから幾度か顔を合わせ、うちの預かり屋を利用してくれた事もあり。
ただ、連絡先を知る程ではない為に最近の様子は分からなかったけれど。

元気そうで良かったと、密かに安堵したものだ。





そしてもう一つ。

初めて――というには少々語弊があるけれど、
この街に来てはじめて、この街の夏祭りを体験した。

浴衣を来た事がないという彼に着付けをしてあげて、一緒にマシカ区のお祭りに足を運んだ。


実家に居た頃に近所で行われていた夏祭りは、そこまで大きい規模ではない上に
どちらかと言えば神事的な意味合いの方が大きいものであったから。
だから、自分にとっての“普通の夏祭り”は、これが初めてだったのだ。

沢山のものを食べた。
いか焼きにわたあめ、かき氷はブルーハワイとオレンジ味。
その場では食べきれなくて、結局りんご飴やフランクフルトは買って帰って食べたんだったか。

フェスの時にも同じ事を感じたが、屋台の食べ物というのは不思議なもので。
普段食卓で食べるものとこうした場所で食べるものとで、味が違って感じられるのだ。
彼と一緒に食べたそのどれもが、とても美味しかった。


それと、彼とは射的で勝負もした。
いつも、彼と勝負事をする時の条件付き。

『負けた方は勝った方の言う事を何でも一つきく』

そうして始めた勝負、てっきり彼の方がその手のものには強いと思っていたが、
射的では感覚が違ったのか、意外にも自分が勝ってしまった。

自分がとったのは犬のぬいぐるみとゲームソフト。
彼は駄菓子に花火セットに猫のぬいぐるみ。
今思い返してみれば、お互いにそれなりに健闘をしたのだなぁと思う。
そう言えば、食べ物と射的の景品とで帰り道は両手が塞がっていたんだったか。


――彼に伝えた『何でも』の内容は、此処では割愛する事にしておこう。










「…………」



思い返せば、返す程。

彼――佳仁さんには、去年は随分と世話になった。


これまでも親しい付き合いはしていたつもりだったけれど、
今のこの、特別な関係になってからだろう。

今述べたはじめての事も、述べきれなかった日頃の付き合いも、

そして――この世界での戦いでも。


きっと彼は、自分の傍に居てくれる。

プライベートだけでなく、
こんな世界で刃を振るう姿を見ても、彼は手を離さずに居てくれる。

そう、当然の様に思える様になっていた。


今まで、こんな人が出来た事なんて一度もなかったから。
落ち着かない様な、逆に、漸く落ち着く事が叶っている様な。
矛盾している様で、その実しっかりと収まっていてくれている。そんな感覚。


そんな付き合いを続けて、また一つ。年を越してしまった。


ずっと戦いの中にいた彼に、これ以上戦わせたくないと言う気持ちはあるけれど。
あのかけがえのない世界で、これからも彼と共に生きていくからには。

今は、目を逸らす事の出来ない状況で。




――だから、せめて。



自分が隣で支えよう。

同じだけ、汚れよう。



彼と共に、生きるために。


一度は捨てた刃を握り直して、彼の隣でともに戦うと。決めたのだ。






「……佳仁さん」




名を呼べば、道中にも関わらず彼は律儀に顔をこちらへ向けてくれる。


当たり前の様に隣に在ってくれる、その優しさに。頼もしさに。




一人、密かに。感謝して。








「――今年も、よろしくね」







彼方の世界と合わせて、二度目となる。

はじまりの挨拶。



不敵に微笑んで、彼に向け手を伸ばしたのだった。
　

十九号(153) から 白檀の塗香 を手渡しされました。

ItemNo.40 白檀の塗香 を使用しました！
　魔香のため、体調は回復しなかった。
　今回の全戦闘において 回復40 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

倒れた狐面の男女が消え去ると同時に、

小さな光の玉が出て空へと飛び去る。

　




そう言って、その場を去るひょっとこ。

　

　

　

その後、再び狐面が襲ってくることはなかった。

各々が街を愉しんでおり、居酒屋で酒に酔い大騒ぎする狐面までいる。

ただただ、賑やかな街だ。

黒須(202) に 150 PS 送付しました。
明楽(303) に 80 PS 送付しました。
都堂(534) に 400 PS 送付しました。

都堂(534) から 葵 を受け取りました。

具現LV を 5 DOWN。（LV20⇒15、+5CP、-5FP）

命術LV を 4 UP！（LV30⇒34、-4CP）
領域LV を 6 UP！（LV19⇒25、-6CP）
料理LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）

ItemNo.36 朝凪の宝石 から防具『朝凪染の首巻き』を作製しました！
　⇒ 朝凪染の首巻き／防具：強さ327／［効果1］回復30 ［効果2］－ ［効果3］－


士円(1230) により ItemNo.32 露草 から薬箱『蛍石の御玉』を作製してもらいました！
　⇒ 蛍石の御玉／薬箱：強さ163／［効果1］水纏30 ［効果2］－ ［効果3］－

黒須(202) により ItemNo.5 白薔薇の御守り に ItemNo.20 すごい木材 を付加してもらいました！
　⇒ 白薔薇の御守り／装飾：強さ381／［効果1］耐疫30 ［効果2］回復20 ［効果3］－

暁(209) とカードを交換しました！

フォレストオファリング （フォレストオファリング）


クリエイト：ラビリンス を研究しました！（深度1⇒2）
ミリキアレギア を研究しました！（深度2⇒3）
セイクリットファイア を研究しました！（深度1⇒2）

インヴァージョン を習得！
サルベイション を習得！
リフレクトバリア を習得！
ポーションラッシュ を習得！
一望千里 を習得！
アルヒェ を習得！
ブリリアンス を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

十九号(153) は 薔薇+1 を入手！
枢木(296) は 人形 を入手！
枢木(296) は ビーフ を入手！
枢木(296) は 小さな灯火 を入手！
十九号(153) は 小さな灯火 を入手！
十九号(153) は 小判 を入手！
十九号(153) は 小判 を入手！

特に移動せずその場に留まることにしました。
体調が全回復しました！

『リュウジン区 L-3：チェックポイント《果物屋》』へ採集に向かうことにしました！
　　 - 十九号(153) の選択は リュウジン区 L-3：チェックポイント《果物屋》

MISSION!!
ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》 を選択！
　　 - 十九号(153) の選択は ミナト区 I-12：チェックポイント《図書館》

［866 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［445 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［500 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［194 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［397 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［310 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［221 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［160 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和
［90 / 500］ ―― 《堤防》顕著な変化
［137 / 400］ ―― 《駅舎》追尾撃破
［5 / 5］ ―― 《美術館》異能増幅
［128 / 1000］ ―― 《沼沢》いいものみっけ
［100 / 100］ ―― 《道の駅》新商品入荷
［196 / 400］ ―― 《果物屋》敢闘
［28 / 400］ ―― 《黒い水》影響力奪取
［58 / 400］ ―― 《源泉》鋭い眼光
［32 / 300］ ―― 《渡し舟》蝶のように舞い
［58 / 200］ ―― 《図書館》蜂のように刺し
［39 / 200］ ―― 《赤い灯火》蟻のように喰う
［8 / 200］ ―― 《本の壁》荒れ狂う領域



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

　

「うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

「ひぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ！！！！」

　

　

　

　

　

　

突然の絶叫と共に、チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！